ナショナルアトラス

改訂新版 世界大百科事典 「ナショナルアトラス」の意味・わかりやすい解説

ナショナル・アトラス
national atlas

一国の自然,社会,経済,文化などを,信頼度の高い調査,統計資料に基づく多数の地図を用いて体系的に表現した地図帳ナショナル・アトラス国勢地図帳)と呼ぶ。各国のナショナル・アトラスをみると,国の地図作成機関が作成したものが多く,国の統計機関,アカデミー,大学などが作成したものもみられる。その内容は,(1)自然 地理的位置,地形地質気候,陸水,植生海洋など,(2)社会 民族,人口,居住形態など,(3)経済 土地利用,産業,交通,財政所得など,(4)文化 言語,宗教,教育,文化財などに及び,多数の主題図と,その解説で構成されるのが一般である。また,たとえばアメリカ合衆国のナショナル・アトラスには,東部から西部,さらに両極地から宇宙に及ぶ開拓史を示す地図があり,日本のナショナル・アトラスには地震の分布図や生物季節(ソメイヨシノの開花日など)の地図があるなど,各国の特徴的な事項を示す地図が挿入されていることも多い。

 世界のナショナル・アトラスの作成状況をみると,フィンランド(1899初版),カナダ(1901初版)などのように古い歴史をもち,4~5回の改訂を重ねている場合もあるが,多くの国々が1950年以降にその編集に着手し,現在では世界の70ヵ国以上でナショナル・アトラスが発行されている。50年以降のナショナル・アトラス作成に関しては,国際地理学連合IGU)のナショナル・アトラス委員会の設立(1956)とこの委員会の活動,国連の地域地図会議のナショナル・アトラス作成の勧告(1958)などが影響をもっていると考えられる。日本のナショナル・アトラス(日本国勢地図帳)も,これらの勧告などを背景に,77年に国土地理院から第1版(見開きA1判,366ページで邦文版と英文版がある)が,90年には新版第2版が出版された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナショナルアトラス」の意味・わかりやすい解説

ナショナルアトラス

国勢地図帳」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のナショナルアトラスの言及

【地図帳】より

… 地図帳の歴史もまた地図の歴史とともに古く,今日では,多種多様な地図帳が発行されている。国の地図作成機関などが中心となり,多数の主題図などを駆使して,その国の自然,社会,経済,文化などを地図を通して表現した地図帳を国勢地図帳(ナショナル・アトラス)と呼んでいる。現在では世界の70ヵ国以上の国々が国勢地図帳を刊行している。…

※「ナショナルアトラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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