ノコンギク(読み)のこんぎく

改訂新版 世界大百科事典 「ノコンギク」の意味・わかりやすい解説

ノコンギク (野紺菊)
Aster ageratoides Turcz.ssp.ovatus (Fr.et Sav.) Kitam.

山野のいたるところに見かけるキク科多年草。地下茎は横にはい,よく発達する。茎の高さは50~100cmでよく分枝する。根出葉は卵状長楕円形で有柄。茎葉は長楕円形,卵状長楕円形または卵形で,ほとんど無柄。両面に短毛を密生する。花期は8~11月。茎上部が分枝して,ややゆるい散房花序をつける。花は舌状花筒状花とからなる頭花である。舌状花は1列,淡青紫色,筒状花は黄色。瘦果(そうか)には4~6mmの冠毛がある。本州九州に分布する。古くからの栽培品種で舌状花が濃青紫色のコンギクcv.Hortensisに対して,野にあるところからノコンギクの名がつけられた。

 ヤマシロギクA.semiamplexicaulis Makino(別名イナカギク)は東海地方以西の本州,四国,九州に分布し,日当りのよい山地に生える。ノコンギクに似ているが,葉の基部が茎を抱き,全草に白い短毛を密生するなどで異なる。

 シラヤマギクA.scaber Thunb.は山地の乾いた草地や道ばたにふつうな多年草。根出葉には長柄があるが,茎上部の葉は短柄となる。葉身は卵心形,洋紙質でかたく,両面に短剛毛があるためざらつく。舌状花は白色。花期は8~10月。北海道~九州,朝鮮,中国に分布する。

 ゴマナA.glehni Fr.Schm.var.hondoensis Kitam.の葉は長楕円形で,両面に短毛があり,裏面には腺点がある。舌状花は白色。花期は9~10月。本州の山地の草原や道ばたに生える。

 ハマベノギクA.asa-grayi Makino(別名イソノギク)は奄美大島,沖永良部島,沖縄本島に分布し,海岸の岩上や崖に生える多年草。花をつけない茎は短く,根出葉をロゼット状につける。花をつける茎は20cmほどに伸長する。花は一年中咲く。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノコンギク」の意味・わかりやすい解説

ノコンギク
のこんぎく / 野紺菊
[学] Aster microcephalus (Miq.) Fr. et Sav. var. ovatus (Fr. et Sav.) Soejima et Mot.Ito
Aster ageratoides Turcz. subsp. ovatus (Fr. et Sav.) Kitam.

キク科(APG分類:キク科)の多年草。高さ30~60センチメートル。葉は短い柄があって互生し、卵状楕円(だえん)形で3本の脈があり、両面に毛があってざらつく。8~11月、径約2.5センチメートルの頭花をつける。中央の管状花は黄色、周辺の舌状花は紫色。日当りのよい山野に普通に生え、北海道から九州に分布する。葉の広いものや狭いもの、舌状花の色変わりのものもあり、多くの変種がある。北海道のものを別亜種として区別することもある。庭に植えるコンギク(紺菊)は、本種から選抜育種されたものである。

小山博滋 2022年3月23日]


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百科事典マイペディア 「ノコンギク」の意味・わかりやすい解説

ノコンギク

キク科の多年草。本州〜九州の山野にふつうにはえる。茎は分枝し,高さ50〜100cm。葉は長楕円形で両面には小剛毛があり,ややざらつく。8〜11月,茎頂に黄色の筒状花と淡青紫色の舌状花からなる,径2.5cmほどの頭花を多数つける。関西の日当りのよい山地に多いヤマシロギクは舌状花が白く,ときにわずかに紫色を帯びることもある。ノコンギクの亜種と考えられている。

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