東南アジアの工芸(読み)とうなんアジアのこうげい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「東南アジアの工芸」の意味・わかりやすい解説

東南アジアの工芸
とうなんアジアのこうげい

中国やインドの古代文明の影響を受けて,東南アジアでは早くから青銅器染織陶芸木竹工芸が発達していたが,その詳細はまだあまり明らかにされていない。ベトナムの木竹工芸,漆工芸,陶芸,インドネシアの金工染織,タイの漆工芸,陶芸が一般によく知られている。日本で安南焼と呼ばれているものは,安南 (ベトナム) で 14~17世紀に作られた染付,鉄絵,赤絵陶器などで,あらいタッチの絵付けに特色がある。多くはインドネシア地方に輸出された。また,日本で宋胡録 (すんころく) と呼ばれている陶器も変化に富んだものである。染織品では,インドネシアのイカット織 (一種のかすり織) とバティック (臈纈染) が有名。イカット織は緯糸,あるいは経糸で文様を織り出すものの2種があり,ジャワスマトラ,ボルネオ,セレベス,バリの各島が中心地で,15世紀頃から盛んになり,現在も続いているところがある。バティックには,ろうを使って防染するものと,米糊を使って防染し植物染料で染めるものとがある。いわゆる更紗 (さらさ) で,ジャワ,セレベスなどを中心に,十五,六世紀頃より始った。ほかに,金箔金粉絹布などに接着した印金,布を絞って防染する絞り染なども,スマトラやジャワで行われている。漆工芸ではタイのキンマが有名。ほかに木竹工芸,牙角工芸,貴石工芸などにもすぐれたものがある。

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