ベトナムの焼物の総称。ただし占城(チャンパ)国時代(1世紀~17世紀末)の焼物はこれに含めない。安南焼の安南とは、唐王朝がかつてこの地を治めていたとき、安南都護府を置いた(679)ことに始まるが、今日では正式なベトナムの国名が使われ、安南と称することはなくなった。ベトナムで本格的な焼物がつくられるようになったのは、民族自立に目覚めた李朝(りちょう)時代の12世紀ごろからである。南中国の陶技を受けて、黄釉(こうゆう)陶、青磁、緑釉陶、黄釉褐彩陶などを焼き始めた。その後14世紀になると、陳王朝下で新たに元(げん)文化の摂取が始まり、元様式の色濃い白磁、青磁、緑釉陶を焼き、14世紀後半には、元時代に景徳鎮(けいとくちん)窯が創始した染付とよばれる下絵付磁器をいち早く導入し、染付を焼造してみごとな製品を世に送り出し、元様式直模(ちょくも)の一期を画した。この元様式は15世紀から17世紀に至るベトナム陶磁の骨格をなしている。15世紀には赤絵もくふうされた。17世紀に入るとさしもの隆盛も萎(な)え、粗略な作風に堕したが、この時期に日本に輸入された多くの製品は、粗笨(そほん)ゆえに茶人が尊ぶところとなり、俗に絞手(しぼりで)、蜻蛉(とんぼ)手とよばれる茶碗(ちゃわん)や水指(みずさし)をはじめとする茶具が多く伝存している。
[矢部良明]
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…日本で〈安南焼〉あるいは〈安南陶磁器〉と呼ばれる。ベトナムは東南アジアの中で最も中国の陶磁器の影響を強く受け,陶磁器生産も非常にさかんに行われた。…
※「安南焼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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