金箔(読み)キンパク

デジタル大辞泉 「金箔」の意味・読み・例文・類語

きん‐ぱく【金×箔】

《古くは「きんばく」》金の薄板をつちでたたいて薄紙のように延ばしたもの。「漆器金箔を置く」
実質以上によく見せかけた外見。また、りっぱな肩書きや身分。
[類語]金属軽金属重金属貴金属卑金属非金属かね合金ホイルメタル

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精選版 日本国語大辞典 「金箔」の意味・読み・例文・類語

きん‐ぱく【金箔・金薄】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 古くは「きんばく」 ) 黄金を槌(つち)でたたいて紙のように薄くのばしたもの。金(きん)
    1. [初出の実例]「合金参阡漆佰伍拾枚」(出典:大安寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747))
    2. 「仏師をよびて金薄(キンハク)をおすに、薄はいくえともなく重さなれども、疵はすべてかくれず」(出典:米沢本沙石集(1283)二)
    3. 「Qinbacuuo(キンバクヲ) ヲク、または、ヲス」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    4. [その他の文献]〔荊楚歳時記〕
  3. 実質以上によく見せかけた外見。また、立派な肩書や身分。→金箔が付く金箔が剥(は)げる
    1. [初出の実例]「人間の身に妙な金箔(キンパク)を着けるやうな事をして」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉老余の半生)

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改訂新版 世界大百科事典 「金箔」の意味・わかりやすい解説

金箔 (きんぱく)
gold leaf
gold foil

金を打ち延ばして薄い箔としたもの。金はあらゆる金属のうちで最も展延性に富み,0.3μm程度の箔にまですることができる。この金箔は光を透過し,透過光はほぼ緑色を呈する。化学的に安定で環境に対して強い金は箔に延ばし,金閣寺や秀吉の茶室などにみられるように,建築物の表装材としても使用され,その色と光沢の美しさを外に誇った。現在では,おもに美術工芸品や,金糸,書籍の天金装飾などに用いられている。市販品には微量の銅や銀が添加されている。

 金箔は,純金のインゴット(型に流し込んで固めた金属塊)をまず熱間圧延して(圧延温度は材料が薄くなるにつれて低くなる)数十μmの厚さの板とし,これを小さく切って和紙の間にはさみ,木づちで打ち延ばしてつくる。和紙には灰汁による処理を施し,しなやかさと滑らかさとを与える。たいせつなことは,紙と箔材との間の摩擦が小さいことと,和紙の硬い繊維が局部的にうまく材料に押しこまれて材料の変形を助けることにある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金箔」の意味・わかりやすい解説

金箔
きんぱく
gold foil

もっとも歴史の古い金属箔一種。金の高い展延性を利用し、打ち延ばして厚さ0.1マイクロメートルのものまでできる。高純度の金は箔打ちが困難で、市販のものは金と銅と銀の合金である。合金にすると展延性は向上するが、色に差異が出る。日本では金沢市で国内全生産量の98%以上がつくられている。製箔工程は機械化が一部行われているものの、技法に伝統的な部分が非常に多く、最終の箔打ち工程では、特殊な処理を施した和紙に上澄みとよばれる厚さ2マイクロメートル程度の金を挟んで束にし、それを革で包んだものを箔打ち機で打って金箔にしている。主として美術工芸品、金切箔(きんきりはく)、金糸の材料になり、また書籍の天金(てんきん)など装飾に用いられる。

[志村宗昭]


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百科事典マイペディア 「金箔」の意味・わかりやすい解説

金箔【きんぱく】

金の薄板を和紙の間にはさみ,木づちで打ち延ばして作る。金は金属中で最も展延性にすぐれ,厚さ0.3μmのものまで作られる。美術工芸品,金糸(金襴(きんらん),(にしき)などに使用)に用いる。
→関連項目金属箔濃絵谷田忠兵衛沈金

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金箔」の意味・わかりやすい解説

金箔
きんぱく
gold leaf

金を薄く引延ばしたもの。金は展延性にすぐれるので,昔は人力で作られた。現在は圧延機,製箔機あるいは電解法によって,きわめて薄い 0.0001mmぐらいの箔を製造。工業用のほか仏像,仏具や陶磁器などの美術工芸品,表具,製本,金糸などに使用される。

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普及版 字通 「金箔」の読み・字形・画数・意味

【金箔】きんぱく

金の薄片。

字通「金」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の金箔の言及

【金】より

…電気伝導度,熱伝導度は大きいが,いずれも銀,銅にやや劣る。展性,延性は金属中最大で,0.1μmの厚さの金箔にまで広げることができる。また1gを2800mにも延ばすことができる。…

【日本画】より

絵具
[箔,泥,砂子]
 箔(はく)には金,銀をはじめとし,プラチナなどが用いられる。金箔には厚さの違いと,銀や銅との合金による色の差があり,純金箔,山吹,青金(あおきん),水金などと呼ばれる。これを画面に貼ったり,散らして文様を表現することは古くから行われた。…

【木工芸】より


[西アジア,西欧]
 木の家具の歴史は古く,古代エジプトではファラオの玉座をはじめ寝台,椅子,腰掛,櫃(ひつ),テーブル,化粧箱,頭架などが作られている。それらの装飾には彫刻,象嵌,塗装,金箔付けなど木工芸にとって主要な装飾技法が使われていた。木材加工に使用した工具には鋸(のこぎり),鑿(のみ),ハンマー,斧,錐(きり),小刀,砥石(といし)などがあり,また部材の組手には枘接(ほぞつぎ)と蟻接(ありつぎ)などが使われていたことからみて,古代エジプトの木工技術はきわめて高い水準に達していたものとみられる。…

【料紙装飾】より

…なお羅文の中に飛雲が加わったり,羅文の飛雲もあるので,両者の技法は近いとみられる。 仕上がった紙を加工する装飾には〈からかみ〉や墨流し,金箔,描(かき)文様,下絵,継紙(つぎがみ)など数多くの技法がある。〈からかみ〉は初め中国から輸入された唐紙の意味であったが,しだいに装飾紙の技法をさすようになった。…

※「金箔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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