朝日日本歴史人物事典 「瀬沼夏葉」の解説
瀬沼夏葉
生年:明治8.12.11(1875)
明治大正時代の翻訳家。群馬県生まれ。父は山田勘次郎,母はよか。本名は郁子。実家が高崎正教会の信者の草分けで,ニコライ女子神学校を修了。このころ教会の婦人矯風誌『裏錦』(1892~1907)に多数寄稿。婦徳の養成を唱道するが,その一方で「女子は卑しきために男子に従ふにあらず」と男女の優劣なきことを主張。ロシア文学に感動し,のち夫である瀬沼恪三郎よりロシア語を習得する。また尾崎紅葉の弟子となり,夏葉の号で師との共訳でチェーホフの作品を紹介。日本初のロシア語からの直接訳でチェーホフを正確に翻訳した先駆者としての意義は大きい。晩年『青鞜』の賛助員として婦徳の呪縛から自己を解放せんと果敢に生きるが早世した。訳書に『チエホフ傑作集』(1908)などがある。
(杉山秀子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報