皹・皸(読み)あかぎれ

精選版 日本国語大辞典 「皹・皸」の意味・読み・例文・類語

あか‐ぎれ【皹・皸】

〘名〙 (古くは「あかがり」) 冬期手足に発生する一種の皮膚病。寒さに当たって、手足の皮膚が乾燥して荒れ、弾力がなくなってしわに沿って割れ目ができる。《季・冬》
狂言記・皸(1660)「あかぎれがござりまする所で、そっとも水の中へはゑはいりませぬ」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉二「母や伯母や鈴江君が僕の手足の赤ぎれ、霜やけを見て、顔をしかめた」
[語誌]ア‐カガリの語源意識が消失して、アカを垢・赤とするアカ‐ガリの異分析を生じ、さらにガリの意味の不明なのをアカ(垢・赤)ギレ(切)という変形で安定させたものと考えられる。→「あかがり」の語誌

あ‐かがり【皹・皸】

[1] 〘名〙 あかぎれ。《季・冬》
神楽歌(9C後)早歌「〈本〉安加加利(アカカリ)踏むな後(しり)なる子」
平家(13C前)八「夏も冬も手足におほきなるあかがりひまなくわれければ」
[2] 狂言。各流。主が、太郎冠者に自分を背負って川を渡るように命じるが、冠者はあかぎれを理由に断わるので、主は、逆に冠者を背負って渡り、川の中で振り落とす。
[語誌]アカガリのアは足で、カカリは動詞「カカル」の連用形名詞。「カカル」は、ひびがきれる意の上代語

ひび【皹・皸】

〘名〙 (「ひみ(皹)」の変化した語。「ひひ」とも) 冬、皮膚が荒れてできる細かい裂け目。寒冷の刺激、汗腺の機能低下、ビタミン欠乏、そのほかの体質的なものなどが原因。皮膚は乾燥して赤くなり、かゆみ、痛みなどが強い。ひびき。ひびり。《季・冬》
※色葉字類抄(1177‐81)「瘃 キク シモクチ 又ヒヒ
※虎明本狂言・皸(室町末‐近世初)「あかがりは恋の心にあらねどもひびにまさりてかなしかりけり」
[語誌]挙例の「色葉字類抄」には別に「瘃 キク ヒミ ヒビ」とあり、ヒミとヒヒ(ビ)の併存状態は鎌倉時代まで続いたと思われるが、室町時代にはヒビが優勢となった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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