茄子・茄(読み)なすび

精選版 日本国語大辞典 「茄子・茄」の意味・読み・例文・類語

なすび【茄子・茄】

[1] 〘名〙
① =なす(茄子)①《季・夏》 〔本草和名(918頃)〕
※大鏡(12C前)五「先は、北野・賀茂河原につくりたる、まめ・ささげ・うり・なすびといふもの」
※宗達茶湯日記(他会記)‐天文一八年(1549)二月一三日「くり色のたなの上に、なすひのつほ」
③ (形動) (①は安価で貧乏人でも食えるというところから) まずしいことをいう。貧乏。貧窮。
浄瑠璃・傾城阿波の鳴門(1768)五「来ると其の儘盗人に、遭ふと云ふのはあたすかん、よくよくなすびな生まれ性」
④ 紋所の名。なすの果実・花・葉を組み合わせて図案化したもの。葉付き三つ茄子・茄子桐・三つ割り茄子など種々あり、その変形も多い。
[語誌]→「なす(茄子)」の語誌。
[2] 狂言鷺流住職に秘蔵のなすびの番をいいつかった新発意(しんぼち)二人が、住職の留守にそのなすびを食べ酒盛りをする。

なす【茄子・茄】

(「なすび」の変化したもの)
ナス科の一年草。インド原産で、重要な果菜として古くから栽培される。高さ〇・六~一メートル。全体に細毛を密布。葉は長柄をもち、長さ一五~三五センチメートルの卵状楕円形で縁は波状。茎やがくにとげのあるものがある。夏から秋にかけ、先が七~八裂した径約三センチメートルの淡紫色の花が咲く。果実は楕円形・長楕円形・球形などさまざまで、色も紫黒・紅紫・紫・白色など品種によって異なり、煮たり漬けたり揚げたり、さまざまの調理法で食べる。漢名、茄。なすび。《季・夏》
※御湯殿上日記‐文明一五年(1483)五月一五日「松木よりなすの小折まいる」
② (形が似ているところから) 茶入れの一種。口元がすぼみ、胴がふくらんだ形のもので、数少なく、唐物(からもの)の最上品とする。なすび。
[語誌]古くはナスビといったが、その語末のビは、アケビ(木通)、キビ(黍)などの植物名に通じるものか。後に、挙例の「御湯殿上日記」などに見られる女房詞の「ナス」が全国的に広まり、近代以降はナスが主流となる。ただ、現在でも西日本ではナスビ、東日本ではナスの形を用いる傾向が見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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