改訂新版 世界大百科事典 「アケビ」の意味・わかりやすい解説
アケビ
akebi
five-leaved akebia
Akebia quinata (Houtt.) Decne.
山野に普通な,大きな果実をつけるアケビ科の落葉つる性木本。ゴザイカズラ,ネコンクソ,モクトンなど地方ごとに多くの異名がある。
雌雄同株。葉は互生し,掌状複葉。小葉は5枚で楕円形,全縁。春たれさがった総状花序に淡紫色の花をつける。雌花は雄花に比べて一段と大きい。花被は3枚,雄花では6本の肉質のおしべと6本の退化しためしべがある。雌花では退化したおしべと6~9本のめしべがある。果実は大きく成熟し,裂開する。アケビという名は実が開くところからきている。半透明の果肉は甘くて,食用になる。本州,四国,九州,朝鮮半島,中国大陸に分布し,北アメリカ東部には帰化している。
アルカロイドは含まないが,漢方で木通(もくつう),通草(つうそう)とよばれる木部は,利尿剤,鎮痛剤として用いられる。乾燥した果実も卒中の予防薬として用いられる。若葉を塩漬にして食べる地方もある。
日本にはほかに,小葉が3枚のミツバアケビA.trifoliata,およびアケビとミツバアケビの中間的な形質をもつゴヨウアケビA.pentaphyllaが分布している。ミツバアケビのつるは,籠や玩具細工の材料となる。信州の鳩車(はとぐるま)は有名。
アケビ科Lardizabalaceae
メギ科,ツヅラフジ科に近縁な双子葉植物離弁花類の科。デカイスネア1属を除いてすべて,つる性木本。葉もデカイスネア属を除いてすべて掌状複葉。托葉はない。花は単性で雌雄同株。果実はみな大きく熟す。東アジアとチリ南部に特異な隔離分布をする。8属約30種がある。日本にはアケビ属のほかムベ属が分布している。
執筆者:寺林 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報