あかり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「あかり」の意味・わかりやすい解説

あかり

宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が2006年(平成18)にM-Ⅴロケットにより打ち上げた日本初の本格的な赤外線天文衛星。計画名はASTRO-FまたはIRIS(Infrared Imaging Surveyor)。全天サーベイ観測(観測センサーを動作させたまま衛星が地球を周回することにより全天をスキャンして観測)することで、赤外線を出す天体をくまなくみつけだし、その位置と明るさを測定することをおもな目的としている。地球大気は、天体からの赤外線を吸収するとともに強い赤外線を放射するため、赤外線で天体観測を行うには宇宙空間に出る必要がある。「あかり」は高度約700キロメートルの太陽同期極軌道に投入され、太陽との位置関係をつねに一定に保ったまま全天サーベイ観測を行う。望遠鏡の指向方向が太陽からほぼ直角の面内で、つねに地球と反対方向を向くよう、軌道1周回につき1回転することで全天を走査する。衛星の大きさは1.9メートル×1.9メートル×3.7メートルで質量は打上げ時952キログラムである。赤外線望遠鏡口径は68.5センチメートル、焦点距離420センチメートルで、望遠鏡を液体ヘリウムと機械式冷却機で極低温まで冷却して熱雑音を抑制する。「あかり」には、遠赤外線(波長50~180マイクロメートル)を観測する遠赤外線サーベイヤー(Far-Infrared Surveyor:FIS)と、波長1.8~27マイクロメートルの近・中間赤外線カメラ(InfraRed Camera:IRC)の2種類の観測装置が搭載された。FISの検出器にはゲルマニウムに少量のガリウムをドープした半導体結晶(Ge:Ga)を使用している。Ge:Ga素子は四つの波長帯で使用される。望遠鏡と観測装置の下には液体ヘリウムタンクが搭載され、6K(摂氏(せっし)温度でマイナス267度)付近まで冷却される。目標寿命は3年であったが、打上げから5年を超えて運用され、2011年に運用を停止した。

 「あかり」は、1万数千回にわたり特定の天体や領域を集中的に観測する指向観測を繰り返し、微弱な天体の検出や、天体の詳しい性質を調べるスペクトルを観測した。また、約130万天体に及ぶ「赤外線天体カタログ」を作成し、2015年には詳細な遠赤外線全天画像データを公開した。これまでの赤外線天体カタログよりも、画像の解像度が4倍から5倍に向上し、より長い波長までの観測データを収集した。

森山 隆 2018年2月16日]


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知恵蔵 「あかり」の解説

あかり

「あかり」は06年2月22日に打ち上げられた日本初の赤外線天文衛星。同年5月には本格的な観測が始まり、最初の映像として星生成領域(反射星雲IC4954)と渦巻銀河M81の鮮明な赤外線映像が公開された。赤外線領域の高い感度と解像力を生かして、恒星や惑星の形成過程の解明、赤外線天体の探査、銀河の形成と進の解明などに活躍が期待される。

(谷口義明 愛媛大学宇宙進化研究センターセンター長 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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