天体の放射する赤外線を観測するための望遠鏡。赤外線を透過するレンズが作りにくいので一般に反射望遠鏡が使われる。また,反射鏡は反射率がよく,赤外線の放射を少なくするため金蒸着されることが多い。赤外線観測は大気中に含まれる水や炭酸ガスの吸収を受けて,地上からの観測は大きな制約を受ける。そのため観測できる波長は20μm以下の,しかも吸収の少ない波長帯に限られる。また大気の熱放射は赤外領域に極大をもっているため,天体からの微弱な赤外線を観測する場合に大きな障害となっている。そのため赤外線望遠鏡では,視野を天体と周囲の空との間を交互に往復させ,両者の強度の差分だけを取り出すという方法(チョッピング)がとられている。
また大気の影響をできるだけ避けるために高山に設置されることが多い。例えばハワイのマウナ・ケア山(4200m)の頂上にはアメリカの口径3m,イギリスの3.8mの2台の赤外線望遠鏡が備えられて活躍している。
日本では長野県上松町の山中(1200m)に口径1mの京都大学の赤外線望遠鏡が働いている。飛行機や気球によってもっと高度を上げれば,20μm以上の遠赤外線の観測が可能になる。さらに大気の影響から完全に解放されるためにはロケットか人工衛星が必要になる。こうなると望遠鏡自身からの熱放射も問題になり,1983年に打ち上げられた赤外線観測衛星IRASでは,みずからも液体ヘリウムで極低温に冷却された。これによって望遠鏡の観測能力は飛躍的に向上し数多くの新発見がもたらされた。
執筆者:奥田 治之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(谷口義明 愛媛大学宇宙進化研究センターセンター長 / 2007年)
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