日本大百科全書(ニッポニカ) 「アキアナゴ」の意味・わかりやすい解説
アキアナゴ
あきあなご / 秋穴子
sharp-nose garden eel
[学] Gorgasia taiwanensis
硬骨魚綱ウナギ目アナゴ科チンアナゴ亜科に属する海水魚。静岡県の富戸(ふと)および宇久須(うぐす)、高知県柏島(かしわじま)、沖縄県西表島(いりおもてじま)、台湾南部、バリ島など西太平洋に分布する。体はきわめて細長く、横断面は前方ではほとんど円形で、尾端に向かって側扁(そくへん)する。頭は非常に小さくて、全長のおよそ4.3%。口は大きく、下顎(かがく)は上顎より突出する。口は目の後縁近くまで開く。上唇の左右の遊離縁は吻端(ふんたん)でつながらず、その間に短い管状の前鼻孔(ぜんびこう)が開く。後鼻孔は吻端と目の前縁のおよそ中間に開く。目は大きく、およそ吻長に等しい。両眼間隔域は平坦(へいたん)で、その幅は眼径より狭い。上下両顎の歯は前部の不規則に並ぶ2列を除くと1列。上顎間骨の前部にはわずかな歯が散らばり、その後方の鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)では1列に並ぶ。頭部の感覚孔は小さいが明瞭(めいりょう)で、吻上に4対(つい)、両眼間隔域に3対並ぶ。側線は完全(側線が鰓蓋(さいがい)の後ろから尾びれの付け根までとぎれないこと)。背びれは胸びれの後縁上方から、臀(しり)びれは肛門(こうもん)の直後から始まり、両方のひれはとがった尾端の周りでつながる。胸びれは短く、およそ10~12軟条で、鰓孔の直後にある。体は青灰色で、無数の小さな黄色っぽい青銅色の斑点(はんてん)がある。頭部と躯幹(くかん)部(胴部)の腹面と尾端にはいっそう鮮やかで、より小さくてより少ない斑点が散らばる。口唇は暗褐色かほとんど黒色。目の縁は黒く、とくに上後部で濃い。胸びれと鰓孔は褐黄色。背びれと臀びれには明瞭な黄色斑点があり、中断した黒くて狭い帯で縁どられる。最大全長は約74センチメートル。水深10~22メートルのサンゴ砂中に潜り、体の前半分ほどを出して水流に向かって流れてくるプランクトンなどを食べる。通常はコロニーを形成する。本種は左右の上唇が吻端でつながらないことなどでシンジュアナゴ属Gorgasiaに属し、同じチンアナゴ亜科のチンアナゴ属Heterocongerと容易に区別できる。本種はハワイアンガーデンイールG.hawaiiensisによく似るが、後種は背びれ始部が胸びれの後縁の上方よりもかなり後方にあり、鰓孔部での体高は低く、頭長の27.8~30.7%(本種では32.9~42.6%)であることなどで本種と区別できる。
[尼岡邦夫 2019年6月18日]