改訂新版 世界大百科事典 「アシナシトカゲ」の意味・わかりやすい解説
アシナシトカゲ
アシナシトカゲ科Anguidaeに属する四肢が退化したヘビ型のトカゲ類の総称。胴の両側に細い溝状のしわをもつグループで,溝は大きな餌を飲むとき胴を広げる役割を果たすものと考えられる。全身が硬い皮骨板に覆われ,胴は円筒形で細長く,四肢を欠くものと完全に備えたものとがあり,5亜科に分けられる。アシナシトカゲ亜科のヒメアシナシトカゲ属AnguisはヒメアシナシトカゲA.fragilis1種のみからなり,腰帯,肩帯の痕跡は残るがまったく四肢を欠くヘビ型。スカンジナビア半島の北極圏付近からカフカス地方に至るヨーロッパ全域,小アジアおよび北アフリカに分布し,全長40~50cm,尾はその1/2~2/3を占める。外形はヘビに似るがいくつかの点でトカゲとしての特徴をもつ。すなわち可動的なまぶたと耳孔があり,舌は短くて平たく,腹板がない。尾は自切してきわめて切れやすく,再生をするがあまり長くならない。歯が鋭く,ナメクジ,カタツムリ,ミミズなどを大量に捕食して有益動物とされるが,姿がヘビに似るため捕殺されるケースも少なくない。卵胎生で夏の終りごろ6~12匹の子を生む。幼体の背面には1本の黒い正中線が走る。他の11種はヨーロッパ南東部,アラビア西部から中国南部,台湾,北アフリカおよび北アメリカに分布する。痕跡的な後肢をもつだけのヘビ型で,ヨーロッパアシナシトカゲOphisaurus apodusは最大1.4mに達する大型であり,卵胎生。餌は昆虫,クモなどの小動物。カナダ南部から南アメリカに分布するアリゲータートカゲ類27種が含まれるアリゲータートカゲ亜科は,他に2属12種が知られ,四肢を備え,ミナミアリゲータートカゲGerrhonotus multicarinatusのように長い尾を巻きつけて高い木に登り,鳥卵をとるものもいる。メキシコから南アメリカに分布するギャリウォスプ亜科のギャリウォスプDiploglossus costatusなど20種は四肢をもつが,ミミズアシナシトカゲ類Ophiodesのように地中性で,後肢がひれ状に退化してしまったものもある。卵生または卵胎生。
→トカゲ
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報