翻訳|azide
アジ化物ともいう。アジ化水素HN3の水素が,金属原子,ハロゲン,あるいは有機の基などで置換されて生ずる化合物の総称。たとえば,NaN3,KN3,AgN3,Hg(N3)2,Pb(N3)2,ClN3,BrN3,CH3N3,C6H5N3などのような化合物がそうである。-N3基は直線型のN-N-Nのような構造をもち,プソイドハロゲン(ハロゲン原子に似た性質を示す基)の一つであり,アジ化水素の水溶液はアジ化水素酸というようにハロゲン化水素酸に似た酸である。したがってアジドも多くの点でハロゲン化物と似ている。たとえば金属のアジドは,金属の水酸化物をアジ化水素酸で中和するか,アジ化ナトリウムNaN3水溶液との複分解によって得られる。金属のアジドは一般に不安定であるが,重金属の塩は爆発性があり,とくに銀,水銀,鉛の塩は爆発性が著しく,点爆薬に用いられるほどである。アルカリおよびアルカリ土類金属の塩は爆発性がなく,加熱によりおだやかに分解して金属と窒素になる。重金属の塩は多く水に難溶であるが,それ以外は水によく溶ける。ハロゲンのアジ化物では,フッ素,塩素の化合物は気体,臭素の化合物は液体,ヨウ素の化合物は固体で,いずれも爆発性である。有機アジドは共有結合性化合物である。塩にはN3⁻が含まれ,図1に示すような直線型の構造をもっているが,たとえば共有結合性化合物のメチルアジドでは図2に示すように直線型ではあるがN-Nの原子間隔が違っている。
→アジ化鉛
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
-N=N+=N-基の名称.
アジド基を置換基接頭辞として命名する場合は,2-アジドベンゼンスルホン酸のように,アジド(azido)という.アルキル基,アシル基が置換したアジドRN3,RCON3は,それぞれハロゲン化アルキル,ハロゲン化アシルとアジ化ナトリウムとを反応させて合成される.
RCl + NaN3 → RN3 + NaCl
RCOCl + NaN3 → RCON3 + NaCl
アシルアジドはアジ化水素HN3のエステルとみなせる.アリールアジドArN3は,相当するジアゾニウム塩とアジ化ナトリウムとの反応,あるいはアリールヒドラジンと亜硝酸ナトリウムとの反応によって合成される.アジ化水素HN3の水素を,金属またはハロゲンで置換したアジ化物も,アジドという.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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