ジアゾニウム塩(読み)じあぞにうむえん(英語表記)diazonium salt

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジアゾニウム塩」の意味・わかりやすい解説

ジアゾニウム塩
じあぞにうむえん
diazonium salt

ジアゾ基=N2をもつ塩ArN2+X-をいう。ここでArはアリール基、X-はCl-、SO4H-、BF4-などの陰イオンである。次の2つの構造式の中間的構造をもつ。


Arが電子吸引基をもち陰イオンがBF4-の特殊な場合を除き、不安定で単離、乾燥が困難なため溶液状態のまま取り扱う。芳香族アミンの塩酸塩、硫酸塩などを水溶液とし亜硝酸ナトリウムを加えるか、アミン酢酸などの有機溶媒に溶かし亜硝酸イソアミルを作用させて合成する。水に溶けエーテルには溶けないものが多い。反応性に富み、窒素ガスを放出して種々の反応を行う。ジアゾ基は、酸性条件での加水分解によりヒドロキシ基に、銅(Ⅰ)塩を用いることによりハロゲン原子とシアノ基に変えられるので、有機合成化学において有用な化合物である。フェノール、アミンとのジアゾカップリング反応は染料合成上重要な反応である。爆発性があり注意を要する。

[谷利陸平]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジアゾニウム塩」の意味・わかりやすい解説

ジアゾニウム塩
ジアゾニウムえん
diazonium salt

一般式は C6H5N≡NX (Xは通常ハロゲン原子) 。芳香族第一アミンを亜硝酸ジアゾ化することによって得られる。熱に対して不安定で,分解して窒素を発生するので低温 (0℃付近) で取扱う。ジアゾニウム塩を種々の条件で反応させることによってフェノール類,芳香族ハロゲン化物,芳香族ニトリル,アゾ化合物などを合成することができるので,有機合成化学上有用な化合物である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android