日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスナール」の意味・わかりやすい解説
アスナール
あすなーる
José María Aznar López
(1953― )
スペインの政治家。マドリードのジャーナリスト一家に生まれる。マドリード大学法学部卒業。北部のログローニョで財務監査官を務めていたとき、保守系の国民同盟(現在の国民党)に入党した(1979)ことをきっかけに政界入り。当時の党首フラガの後押しもあって、党内で急速に頭角を現し、下院議員当選(1982)、カスティーリャ・イ・レオン州首相就任(1987)など、政界での影響力を強めた。第10回党大会(1990)で党首に選出されたのちは、党内若手の代表として采配(さいはい)を振るい、フランコ体制の残滓(ざんし)とみられがちだった党のイメージを刷新し、穏健保守政党への脱皮を図った。1996年総選挙では14年間政権を掌握していた社会労働党に僅差(きんさ)ながら勝利して政権を獲得、首相に就任した。経済改革やヨーロッパ連合(EU)への参加を積極的に進めて2000年の総選挙でも大勝、国民党単独内閣を成立させた。また、バスクの独立を求める過激派組織「バスク祖国と自由」には強硬路線を取り続けた。2002年前半にはEU議長を務めた。2003年のイラク戦争に際しては、フランスやドイツが反対するなか、ヨーロッパではもっとも早くアメリカ、イギリス軍の攻撃支持を表明、戦争終了後のイラクにも積極的に派兵した。しかし2004年3月にマドリードで死者200人近くを出す爆弾テロが発生、アルカイダの関与が疑われるなど世論が動くなか、同月に行われた総選挙ではイラク派兵反対を主張するスペイン社会労働党に敗れ、8年ぶりの政権交代となった。
[竹中克行]