采配(読み)サイハイ

デジタル大辞泉 「采配」の意味・読み・例文・類語

さい‐はい【采配/采幣】

紙のしで一種。昔、戦場大将が手に持ち、士卒指揮するために振った道具厚紙を細長く切って作ったふさを木や竹の柄につけたもの。色は白・朱・金・銀など。
指図。指揮。「―をとる」
《形が1に似ているところから》はたき。ちりはらい
[類語]指揮監督差配仕切る取り仕切る舵を取る音頭を取る

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精選版 日本国語大辞典 「采配」の意味・読み・例文・類語

さい‐はい【采配・采幣】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 紙の幣(しで)の一種。遠距離への合図や命令の伝達に用いる。軍陣では大将の指揮の持ち物とした。白紙のほか、朱塗り、金、銀の箔置きなどがある。采。
    1. 采配<b>①</b>〈武用弁略〉
      采配〈武用弁略〉
    2. [初出の実例]「頸(くび)数は十六の内に、さいはいを手に掛たる武士の頸を、七つ取候て」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品四八)
  3. ( ━する ) ( 「さいばい」とも ) 指図すること。指揮してさばくこと。
    1. [初出の実例]「共帳とは治具共帳と云て、そこでもてなされとて支度をさいはいする事ぞ」(出典:史記抄(1477)一三)
    2. 「なまぬるい兄のさいばい、親父のかはりに相手に成、サア義経殿」(出典:浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)五)
  4. ( 形がに似ているところから ) ちりはたき。ちりはらい。《 季語・新年 》 〔俚言集覧(1797頃)〕

采配の語誌

( について ) ( 1 )鷹狩に用いられた「麾(ざい)」、または禅僧威儀具「払子(ほっす)」に由来するといわれ、古くは「平治物語絵巻‐待賢門合戦巻」(江戸後期模本)に犛(はぐま)(=白熊)の毛の采配らしきものがあるが、それ以降は戦国時代に至るまで、確実な用例はない。
( 2 )これを手にする者が指揮官となり、振り動かして合図をしたところから、「采配を取る」「采配を振る」で、指揮をすることを意味するようになった。

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改訂新版 世界大百科事典 「采配」の意味・わかりやすい解説

采配 (さいはい)

日本の指揮用具の一つ。再拝,采幣,采牌などとも書くが,いずれもあて字である。古く放鷹(ほうよう)にあたってタカの指揮に用いる切り裂き紙をたばねた竿(さお)を〈ざい〉といい,また犬追物(いぬおうもの)の合図にも神供の幣を用いて〈再拝〉といった。しかし16世紀以来ひろく軍陣にも使用して,遠近の部下に司令を示す指揮用具となり,軍神勧請(かんじよう)して主将の料とされ,軍功によって手兵を授けられた部将にも使用が許可された。そのため再拝の紙は白紙を本儀とするが,軍学の流行につれて金の切割(きりわり),朱の切割などが生じた。また入道した武将が,白熊(はぐま)と称してヤク犛牛)の尾毛をたばねた払子(ほつす)を使用したが,再拝にも紙のかわりに白熊を用いることが行われるようになった。さらにこれを将帥の料と伝える麾旌(きせい)の遺制と考え,麾の字を〈さい〉と呼んで再拝の意に用いるようになった。再拝には甲州流,越後流などが詳細な規定を示すが,初期の風はきわめて簡素である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「采配」の意味・わかりやすい解説

采配
さいはい

軍勢の進退を指揮するため、大将以下将帥の持った用具。30センチメートル程度の柄(え)の先に、幅1.2センチメートルほどに細長く裂いた白紙や、白熊(はぐま)の毛などを束ねて取り付けたもの。近世初期のものは粗末な製作であるが、後世は、金銀箔(はく)押し、朱塗りに、柄も塗りとし金具をつけた豪華な製作がある。その始源は、鷹狩(たかがり)の鷹匠、射術の検見(けみ)役などが合図に振る「麾(ざい)」や、禅僧の威儀具の「払子(ほっす)」などに由来するものとされる。軍陣での所用の古い例は、『平治(へいじ)物語絵巻』(原本は伝わらず模本)待賢門合戦の条に犛(はぐま)(白熊)の毛の采配がある。しかし、それ以後、戦国時代に至るまでは、確実な使用例はない。近世中ごろには当世具足の胸部に打った環を、「采配付けの環」と称しているから、近世初期までには広く普及していたのである。また江戸初期作製の本多忠勝(ただかつ)や黒田長政(ながまさ)らの甲冑(かっちゅう)着用の肖像画にも采配を持った姿が描かれている。指揮具としてよりも威儀の具であったとも思われる。

[齋藤愼一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「采配」の意味・わかりやすい解説

采配
さいはい

采幣,采牌,再拝とも書く。持主が部隊の指揮官であることを示す目印の一つ。日本では 16世紀から幕末まで使われた。最も一般的なものは,白紙を細く切って房にし,柄につけたものである。これを振って指揮した。軍神を勧請するものと考えられていた。

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百科事典マイペディア 「采配」の意味・わかりやすい解説

采配【さいはい】

再拝,采幣,采牌とも書く。日本の指揮用具の一つ。白紙(または銀紙,朱紙,金紙など)を細く切って束ね総(ふさ)をつくりそれに柄をつけたもの。16世紀以来広く軍陣で用いられ,大将がこれを打ち振って士卒を指揮した。

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