日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセウツボ」の意味・わかりやすい解説
アセウツボ
あせうつぼ / アセ鱓
paintspotted moray
[学] Gymnothorax pictus
硬骨魚綱ウナギ目ウツボ科に属する海水魚。八丈島、和歌山県以南の太平洋沿岸、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島、南大東島、台湾南部、オーストラリア、ハワイ、ガラパゴス諸島など太平洋、インド洋に広く分布する。体は細長く、側扁(そくへん)する。脊椎骨(せきついこつ)数は126~135。吻(ふん)は丸い。口は大きく、後端は目の後縁を越えて後方まで開く。上下両顎(りょうがく)には鈍い歯が1列に並ぶ。また前上顎板上の中央部と下顎の先端部にも牙(きば)状ではない鈍い歯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)には2列の小さい歯があるが、ウツボ属のほとんどの種にあるような、頭蓋骨と緩く関節し押さえると倒すことができる牙状歯ではない。目はおよそ上顎の中央部の上方に位置する。背びれは鰓孔(さいこう)の上方から、臀(しり)びれは肛門(こうもん)の直後から始まる。体は灰白色~黄灰色で、小さい暗色点が散在し、網目状に連絡する。若魚では体は黄色がかり、多数の輪状の斑紋(はんもん)がある。小さいものほど、斑紋が大きくて数が少ない。体長10センチメートルの個体では1列に約50個の斑紋がおよそ3縦列に並ぶが、成長するにつれて、不明瞭(ふめいりょう)になる。虹彩(こうさい)に暗色斑点がある。沿岸のサンゴ礁や潮間帯の岩礁域の割れ目などにすみ、小魚、甲殻類などを食べる。ときには外に出て、餌(えさ)を追跡する。全長は1.4メートルほどになる。精子と卵子を同時に成熟させる同時的雌雄同体魚として知られている。
[尼岡邦夫 2019年6月18日]