アダムクス(読み)あだむくす(英語表記)Valdas Adamkus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダムクス」の意味・わかりやすい解説

アダムクス
あだむくす
Valdas Adamkus
(1926― )

バルト三国のひとつリトアニアの政治家。1926年11月、リトアニア中部カウナス生まれ。第二次世界大戦中は祖国の独立を目ざして対ドイツ、対ソ連闘争に参加した。1949年に両親とともにアメリカへ移住。苦学してイリノイ大学工学を学んだ。学生時代からリトアニア系アメリカ人の文化・政治団体のリーダーとして活動し、ソ連に併合された祖国の解放を訴えた。1970年から1997年までアメリカ環境保護局(EPA)に勤務し、おもに中西部で環境保護行政の現場責任者として働いた。この間にアメリカの市民権を取得し共和党入党。そのかたわら、在職中もリトアニアを頻繁に訪れ、環境保全の実務や学術研究を中心に祖国への支援を続けた。

 1997年にリトアニアへ帰国し、アメリカの市民権を放棄。1998年の大統領選挙に立候補して当選中道右派の立場からヨーロッパへの復帰を掲げ、5年間の任期中は北大西洋条約機構NATO)とヨーロッパ連合(EU)への加盟を目標とした。2003年の選挙再選を目ざしたが、ロランダス・パクサス元首相に敗れた。しかしその後、パクサスはロシアマフィアと関係をもつ企業から多額の献金を受けていたことが発覚し罷免(ひめん)された。アダムクスは2004年に行われた大統領選挙にて決選投票の末に当選。2009年に任期満了に伴い大統領を退任した。

[緒方賢一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アダムクス」の意味・わかりやすい解説

アダムクス
Adamkus, Valdas

[生]1926.11.3. カウナス
リトアニアの政治家。大統領(在任 1998~2003,2004~09)。第2次世界大戦中,ソビエト連邦の支配に対するリトアニアの抵抗運動グループに参加して戦い,ナチス占領下では地下新聞を発行。その後,再びリトアニアがソ連の支配下に置かれるとソ連軍に抵抗したが,1944年にドイツに亡命してミュンヘン大学で学んだ。1949年,家族とともにアメリカ合衆国に渡り,シカゴのリトアニア系アメリカ人街に定住した。1960年イリノイ工科大学を卒業。土木工学の学位を取得した。1970年,発足したばかりのアメリカの環境保護局に入局。1971年に中西部地域の副長官となり,1981年に長官に任命された。1997年退職。リトアニアへ帰国してリトアニア市民権を取得,大統領選挙に立候補すると発表した。1997年後半に行なわれた第1回投票では当選を果たせず,1998年1月4日の決選投票で僅差で勝利を収めた。アダムクスは,リトアニアの北大西洋条約機構 NATOおよびヨーロッパ連合 EUへの加盟を支持し,実現させる一方で,ロシアとの緊張緩和や,近隣諸国との友好関係構築のために働いた。ソ連崩壊後の経済的困難に直面しながらも,経済成長と,失業率の低下を実現させた。2003年,再選をねらった大統領選挙でロランダス・パクサスにまさかの敗北を喫したが,パクサスが弾劾にかけられたため 2004年に行なわれた選挙で再選を果たした。2009年任期満了に伴い,大統領を退任した。

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