カウナス(その他表記)Kaunas

デジタル大辞泉 「カウナス」の意味・読み・例文・類語

カウナス(Kaunas)

リトアニア中央部にある同国第2の都市。ネムナス川とネリス川の合流点に位置する。11世紀以前に創設され、交易の要地として発展。15世紀にハンザ同盟に加わり、17世紀から18世紀にかけてロシアスウェーデン侵攻を受けた。19世紀に鉄道が開通して諸工業が盛んになり、旧ソ連併合以前は臨時首都が置かれた。13世紀から17世紀にかけて建造されたカウナス城カウナス大聖堂、「白鳥」と称される18世紀のバロック様式の旧市庁舎のほか、ビタウタス大公教会ペルクーナスの家などの歴史的建造物が多く残る。また、旧ソ連併合以前の戦間期には臨時首都が置かれ、近代的な都市開発が進められ、モダニズム建築が多く残る。2023年に「モダニズム都市カウナス、楽天主義建築1919年‐1939年」の名称世界遺産(文化遺産)に登録された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カウナス」の意味・わかりやすい解説

カウナス
Kaunas

リトアニア中南部の都市。旧称コブノ Kovno。ネマン川(リトアニア語名ニャムナス川)とその支流ビリヤ川(リトアニア語名ネリス川)の合流点に位置する。
1030年に要塞がつくられたのが始まりで,1317年に都市となり,1408年に自治権を得たが,1410年までたびたびドイツ騎士団襲撃を受けた。その後,交易によって繁栄し,1569年にリトアニア=ポーランド領となり,1795年には第3次ポーランド分割によってロシアに帰属した。1812年にナポレオン軍の侵攻(→ナポレオン戦争)により壊滅的な打撃を受けたが,19世紀半ばには復興し,鉄道開通後は貿易や産業が発展,1920~40年には第1次世界大戦後に独立したリトアニアの首都となった。1940年にソビエト連邦に併合され,第2次世界大戦では大きな被害を受け,戦前・戦後を通じた強制退去により多くの市民を失った。ソ連の支配下においてもカウナスの人口に占めるリトアニア人の割合は高く(20世紀末時点で約 80%,首都ビリニュスでは約 40%),リトアニアの国民意識の中心地であり続けた。1972年にはソビエトの支配に抗議して焼身自殺を遂げた学生の葬儀のあと,暴動が発生した。
川の合流点に建つカウナス城をはじめ,街には多くの歴史的建造物が残っている。城の近くには細く曲がりくねった路地が連なる旧市街が広がり,ビタウタス大公教会(1400),聖三位一体教会(1634),聖フランシスコ・ザビエル教会(1666)などがある。旧市街の東の新市街および高台には,首都であった戦間期に急速な都市化がもたらした数多くの近代建築が立ち並び,2023年「モダニズム都市カウナス:楽観主義建築,1919~1939年」として世界遺産の文化遺産に登録された。高台に行くには長い階段やケーブルカーを利用する。
鋳金,工作機械,ラジオ,家具,毛織物絹織物などが製造される重要な工業都市であり,また鉄道,道路の陸上交通や,水上交通の要地である。電力はニャムナス川の水力発電所から供給される。教育,文化の中心であり,高等職業訓練学校や医療,農業等の専門教育機関,劇場や博物館などの文化施設がある。このほか,1939~40年にカウナスの日本領事館に勤務した杉原千畝副領事の資料を展示する杉原記念館もある。人口 29万7846(2016)。

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改訂新版 世界大百科事典 「カウナス」の意味・わかりやすい解説

カウナス
Kaunas

バルト海に臨むリトアニア共和国中南部にある同国第2の都市。人口36万2348(2005)。1917年までコブノKovno,以後カウナスと改称。第1次,第2次の両大戦間のリトアニア独立国時代の首都(1919-40)で,ポーランド名のコブノで呼ばれることもある。カウナスは13世紀,ドイツ騎士修道会のリトアニア内奥への侵攻に対処して,ネマン川とネリス川の合流点に築かれた城郭都市で,陸路と水路の要所であった。18世紀末にはオギンスキー運河が開かれ,バルト海と黒海を結ぶ交易の中継地でもあった。第2次大戦後政治の中心は首都ビルニュスに移されたが,経済,文化,高等教育(研究所,大学)の分野での同都市の役割は依然として大きい。旧市街地区には中世以来の種々の様式による教会,ゴシック建築の商館〈ペルクーナス(雷神)の邸〉などの遺構が多いほか,20世紀初頭の画家兼作曲家チュルリョーニスの美術館があり,内外の観光客が絶えない。カウナスのバスケットボール・チーム〈ジャルギリス〉は世界屈指の力をもつ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カウナス」の意味・わかりやすい解説

カウナス
かうなす
Каунас/Kaunas

リトアニア共和国第二の都市。人口37万8943(2001)。ネマン川とネリス川の合流点に位置し、市の中心部はネマン川右岸に発達している。11世紀初頭に記録に登場する古い都市で、14~15世紀初頭にはリトアニアとチュートン騎士団との闘争で戦略上重要な役割を果たした。侵略と破壊が繰り返されたが、15世紀に自治制を確立し、手工業と商業の中心地として発展した。古くから皮革工業、絹織物工業が盛んで、第二次世界大戦後、機械金属工業(タービン、モーター、無線機、暖房用ボイラー)、軽工業(絹織物、毛織物、縫製、合成ゴム、木製品)、食品工業(食肉、酪製品)など30以上の大工場が新たに建設された。鉄道、幹線道路が分岐する交通上の要衝でもある。町並みはリトアニア・ゴシックの美しい歴史的建造物が多く、13~17世紀に建設された城や、ビタウタス教会(1400)などみるべきものが多い。

[山本 茂]

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百科事典マイペディア 「カウナス」の意味・わかりやすい解説

カウナス

リトアニア共和国の都市。旧称コブノ。ネマン川に面する河港をもち,1919年―1940年リトアニア独立時の政府所在地。第2次大戦の激戦地で,ユダヤ系市民の多くはナチスによって虐殺された。当時日本領事館副領事だった杉原千畝がユダヤ人6000人に脱出のための査証を与えたことでも知られる。農機具,木材,製紙,紡績,食品加工などの工業が行われる。31万5933人(2011)。

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