アダムズ=ストークス症候群(読み)アダムズストークスしょうこうぐん(その他表記)Adams-Stokes's syndrome

改訂新版 世界大百科事典 の解説

アダムズ=ストークス症候群 (アダムズストークスしょうこうぐん)
Adams-Stokes's syndrome

1761年G.モルガーニによって記載され,19世紀に入ってアダムズR.Adams(1827),ストークスW.Stokes(1846)らによって報告されて,広く認められるようになった症候群。元来は,完全房室ブロックなど心ブロック(心臓の刺激伝導系における伝導障害)のある患者で,突然,心停止による脳循環不全が起こり,意識消失や全身痙攣(けいれん)が起こる病態をさしたが,現在では,心ブロック以外の不整脈や著しい血圧低下による一過性脳循環不全をも含めて総称している。原因は,上記の完全房室ブロックや洞房ブロック洞停止などの心ブロックなどによる徐拍や,心室細動心室頻拍,心房粗動の1対1伝導などの頻拍性不整脈によって心拍出量が激減し,一時的に脳循環不全となることによる。しかし心拍が修復されると,循環が回復して正常に戻る。

 主症状は,突然に起こる脱力や意識混濁,失神(軽い場合はめまい)で,客観的な徴候としては,まず顔面,四肢が蒼白となり,次いでチアノーゼを呈し,意識消失,間欠性痙攣がみられる。てんかんとの違いは,この時期,脈拍が触れないか,あるいは非常に遅く(通常20以下),不整なことである。血圧は低下し,呼吸も止まり,尿失禁もみられ,数分間続くと瞳孔の対光反射も消失するに至る。

 診断はこのような脈拍消失や血圧の極端な低下といった症候から比較的容易であるが,確定診断は,発作時の心電図で房室ブロックや心室細動などの不整脈を確認するか,発作前後に,前兆となる不整脈をみつけることによってなされる。治療としては,発作中には,胸部の叩打や人工呼吸をはじめとする心肺蘇生術を行う。不整脈の治療が必要で,心ブロックのある場合はペースメーカーの植えこみ,心室頻拍・細動には抗不整脈薬や植えこみ型除細動器の使用がおもな治療法となる。基礎疾患の重症度にもよるが,明らかな原因のない心ブロックなどでは,ペースメーカーによって予後は非常によくなる。
不整脈
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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