アテナゴラス(読み)あてなごらす(その他表記)Athenagoras

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アテナゴラス」の意味・わかりやすい解説

アテナゴラス
あてなごらす
Athenagoras
(?―190ころ)

初代キリスト教会の護教家で、「アテネキリスト教哲学者」と称された。生涯については不詳である。タティアノスに比してはるかに古典ギリシアに親近性を有し、また、洗練された用語、文体においてユスティノスをしのぐ。神の唯一性、その存在と場、ロゴス=キリストの神性などの問題に関して哲学的反省を加え、三位(さんみ)一体論の教義形成の先駆者となった。著作に、皇帝マルクス・アウレリウスとその子コンモドゥスにあてた『キリスト者のための嘆願Presbeia peri tōn christianōn、および『死者復活について』Peri anastaseōs necrōnが残されている。

[谷隆一郎 2015年1月20日]

『J. QuastenPatrology (1966, Spectrum, Utrecht, Antwerp)』『B. AltanerPatrologie (1978, Herder, Freiburg, Basel, Wien)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「アテナゴラス」の意味・わかりやすい解説

アテナゴラス
Athēnagoras

2世紀のキリスト教弁証家。生没年不詳。〈アテナイのキリスト教哲学者〉と呼ばれた。177年ころ皇帝マルクス・アウレリウスとその子コンモドゥスにあてた《キリスト者のための使節》は,当時キリスト教に向けられた無神論人肉を食べること,近親相姦といった中傷に反駁するものである。教義を弁論した《死者の復活について》は真作かどうか疑われている。三位一体の教義を哲学的に論証した最初の護教家として知られる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アテナゴラス」の意味・わかりやすい解説

アテナゴラス
Athenagoras

2世紀後半のアテネの哲学者で,のちキリスト教に回心して護教家となる。ローマ皇帝マルクス・アウレリウスとその子コモドスにあてた護教論『キリスト者のための弁護』 Presbeia peri Christianōn (177頃) において,神の三位一体説を基礎づけた。一神論の合理的証明が初めて彼に見出され,プラトン哲学の影響が著しい。残存している著書に『死者の復活について』 De resurrectione mortuorumがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android