改訂新版 世界大百科事典 「アブノメ」の意味・わかりやすい解説
アブノメ
Dopatrium junceum (Roxb.)Buch.-Hamil.
湿地に生えるゴマノハグサ科の小さな一年草。水田雑草になる。茎は柔らかく円柱状で高さ10~25cm。葉は対生。根ぎわの葉は狭長楕円形で柄がなく,長さ10~25mm,幅3~5mm,鋸歯がない。葉は茎の上方にいくにしたがい小さくなる。夏から秋にかけて葉のわきごとに1花をつける。茎の中部の葉のわきには柄のない閉鎖花をつけ,上部の葉のわきには柄のある正常花をつける。花冠は唇形,淡紫色で長さ5~6mm。花筒内に2本のおしべと2個の仮雄蕊(かゆうずい)がある。蒴果(さくか)は球形で長さ2mm,多くの種子がある。本州の福島県以南~沖縄,朝鮮半島,中国,東南アジア,インドに広く分布する。閉鎖花のつく形がアブの目を思わせるので,〈虻(あぶ)の目〉の名がある。また,茎をつぶすと音がするので,パチパチグサの名もある。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報