日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ア・プリオリとア・ポステリオリ
あぷりおりとあぽすてりおり
a priori, a posteriori
元来それぞれ、「先なるものから」「後なるものから」という意味のラテン語の成句で、「先天的」「後天的」と訳されるが、カントにより認識の経験からの独立性に関連して使われ、認識論上の術語となった。たとえば、多くの人の意見では、数学の真理の正しさは、経験とは独立に、つまり経験に先だって知られる。したがってこれは、ア・プリオリな知識の例になる。これに対して、物理学の法則の正しさは、実験や、観察といった経験的な事柄によって確かめられて知られる。つまり、経験した後になって真理として知られるので、ア・ポステリオリな知識の例になる。これには異論もあり、極端な経験論者は、数学上の成果を含めてすべての知識はア・ポステリオリに得られるとするし、また、物理学の法則はア・プリオリなものだと主張する人もいる。また、「経験」の内容をどう了解するかによっても、ア・プリオリとア・ポステリオリの区別は変わってくる。
[吉田夏彦]