改訂新版 世界大百科事典 の解説
アポロニオス・デュスコロス
Apollōnios Dyskolos
2世紀アレクサンドリアのギリシア語文法学者。生没年不詳。古代・中世・ルネサンス初期に至るまで,文法学の権威と仰がれた。その著述は二十数巻を数えたと伝えられるが,現存するのはその中の4巻で,代名詞,副詞,接続詞,統辞論をおのおの扱い,統辞論の巻はアポロニオスの文法学の要諦をも兼ねている。ギリシア語文法学は前2世紀トラキアのディオニュシオスによって学問として説かれたのを嚆矢(こうし)とするが,アポロニオスは俗説を排し,語の機能を明らかにし,文法的原則に立脚した品詞論や統辞論を展開し,文法を学問的基礎の上に構築した。彼はラテン語にも通じていたが,比較文法を試みた形跡はない。彼の文法学,とりわけその品詞論は,6世紀コンスタンティノープルでラテン語文法学の大成を遂げたプリスキアヌスにも多大の影響を与えたのみか,ガザのテオドロスや,K.ラスカリスの時代まで重用されている。
執筆者:久保 正彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報