アラマン(その他表記)Lucas Alamán y Escalada

改訂新版 世界大百科事典 「アラマン」の意味・わかりやすい解説

アラマン
Lucas Alamán y Escalada
生没年:1792-1853

メキシコの政治家,歴史家。鉱物学を専攻した後,1814年にはスペインに渡りドイツ,フランスで専門分野を深めた。スペインではメキシコ鉱山業の衰退過程と原因に関する著作を出版。これは独立国メキシコの産業復興に大きな影響を与えた。さらにイギリスへ留学後は本国で農牧融資銀行を創設した。23年以降は内務外務大臣として国立文書館や博物館などを創立し,教育・文芸基盤を作り上げる一方,30年代にはアメリカ・メキシコ両国間の国境線の設定にあたり,執拗(しつよう)に国益を代弁し,アメリカへの対抗上ラテン・アメリカ諸国との友好関係を緊密化した。穏健主義に立脚した典型的な知識人で,《メキシコ共和国史論》(1844-49),《メキシコ史》(1849-52)には彼の君主制擁護論と保守主義を貫いた歴史観がうかがえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラマン」の意味・わかりやすい解説

アラマン(メキシコの政治家、実業家、歴史学者)
あらまん
Lucas Alamán
(1792―1853)

メキシコ保守主義を代表する政治家、実業家、歴史学者。鉱山都市グアナフアトの名門に生まれたが、1810年イダルゴの反乱略奪を受け財産を失った。のちヨーロッパへ留学し、1820年代以後、イギリス資本の導入による鉱山業の復興と近代化に努めた。政治的には自由主義に反対し、王制または少数エリートによる強力な中央集権制、親カトリック、産業保護、富国強兵、親ヨーロッパ・反アメリカ外交などを主張した。1823年には王制樹立のため奔走し、1830~1832年にはブスタマンテ政権に入閣勧業銀行を設立して繊維工業の育成などに努力した。1853年には強力な中央集権国家を夢みてサンタ・アナ独裁政治に協力した。『メキシコ史』5巻ほか多数の著書がある。

野田 隆]


アラマン(民族)
あらまん
Alamannen ドイツ語

スエビ人の一支族を中核とする西ゲルマン系混成集団。原住地エルベ川流域より移動して、3世紀中葉ローマ領に進出、5世紀初頭にはスイス東部からレッヒ川、アルプスからライン中流域にまで広がった。496年フランク国王のクロービスに征服され、フランク王国の一部となった。王国崩壊後は、大公のもとに政治的統一を回復、シュワーベン大公領としてドイツ王国に属した。

[平城照介]

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世界大百科事典(旧版)内のアラマンの言及

【ゲルマン人】より

…やがて民族大移動期に展開する東ゲルマン諸部族のあの活発かつ遠距離への迅速な移動の可能性は,一つにはこうした歴史的背景があったせいである。逆にいうならば,その歴史的環境からみて,ゲルマンの故地からきわめて漸次かつ長期にわたって南西方へ移動した西ゲルマン諸族(フランクFranken,ザクセンSaxen,フリーゼンFriesen,アラマンAlamannen,バイエルンBayern,チューリンガーThüringerなど)には,ローマ文明との融合現象があり,北ゲルマン諸族(デーネンDänen,スウェーデンSchweden,ノルウェーNorwegerなど)には,古いゲルマン的伝統を保持する可能性が強かったということになる。民族大移動【増田 四郎】。…

【民族大移動】より

…その一つは,移動前,ゲルマニアの東部にいた東ゲルマン諸族,次はその西部にいた西ゲルマン諸族,そしていま一つは北方スカンジナビア半島やユトランド半島にいた北ゲルマン諸族である。東ゲルマンに属する部族としては,東ゴート,西ゴート,バンダルWandalen,ブルグントBurgunder,ランゴバルドLangobardenなどが数えられ,西ゲルマンでは,フランクFranken,ザクセンSachsen,フリーゼンFriesen,アラマンAlamannen,バイエルンBayern,チューリンガーThüringerなどが,また北ゲルマンでは,デーンDänen,スウェーデンSchweden(スベアSvear),ノルウェーNorwegerなどが挙げられる。このうち北ゲルマン諸族は,前2者よりやや遅れ,8世紀から11世紀にかけ,ノルマン人の名でイングランド,アイルランド,ノルマンディー,アイスランドならびに東方遠くキエフ・ロシアにまで移動し,それぞれの地に建国したため,通常これを第2の民族移動と称する。…

※「アラマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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