改訂新版 世界大百科事典 「アリストロキア」の意味・わかりやすい解説
アリストロキア
birthwort
Aristolochia
ウマノスズクサ科の熱帯や温帯に産する多年生のつる性植物で,日本にもウマノスズクサをはじめ8種が自生する。ヨーロッパ産のA.clematitisは安産の薬効があると信じられ,ためにbirthwortと呼ばれる。また学名もaristos(最善)+locheia(出産)の意味である。アリストロキアと称して観賞用に栽培されるのはおもに熱帯性のつる性のもので,特異な形体と色彩を有する花を観賞する。葉は緑色で互生し,心臓形・広卵形・長披針形などになる。成株に達すると花がそれぞれのもとにつくが,花被は萼の変化したものであり,花の筒部がパイプ状で珍しい形をしている。現在,観賞用に栽培されているものは3~5種。よく知られるのはパイプカズラA.elegans Mast.で,らっぱ状の花の直径が8~10cm,紫褐色に白い斑点が入り,珍奇な感じである。さらに花の大きなものにオオパイプカズラA.grandiflora Swartz.があり,花の直径は35cmと大きい。ほかに花より葉脈が白くネット状で美しいA.finbriata Cham.や,中国産のもので日本の暖かい地方では戸外で育つものにA.westlandi Helmsleyがある。観賞用のものはおもに中南米産のもので,冬は13℃を保ち,陽のよくあたる室内か温室に置く。繁殖は実生か挿木によるが,発根には時間がかかる。一般の鉢花よりは育てにくい。
執筆者:坂梨 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報