日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウマノスズクサ」の意味・わかりやすい解説
ウマノスズクサ
うまのすずくさ / 馬鈴草
[学] Aristolochia debilis Sieb. et Zucc.
ウマノスズクサ科(APG分類:ウマノスズクサ科)の多年草。根はよく地中をはって所々に苗を生ずる。全草無毛。茎は細く、初めは直立しているが、やがて他のものにまつわりつく。葉は互生し卵状披針(ひしん)形で、基部は心臓形となる。7~8月に各葉腋(ようえき)に1個の花をつける。花弁はなく、萼(がく)は緑紫色の筒状となり、先がらっぱ状に開く。雌しべは6本で、花柱が互いに合生して短い柱になり、この周りに6本の雄しべが着生する。子房は下位。果実は球形の蒴果(さくか)で、熟すと6裂する。原野や川の土手などに生え、東北地方南部以西に分布し、沖縄さらに中国にまで広がる。名は、果実のようすが馬の首にかける鈴に似ることによる。根は青木香(せいもっこう)とよばれ、虫毒や蛇毒の解毒剤として用いられた。また、成熟果実を乾燥したものは馬兜鈴(ばうれい)とよばれ、解熱、去痰(きょたん)、鎮咳(ちんがい)薬として使われた。同属のオオバウマノスズクサは葉は円心形で大きく、南関東地方以西および中国にも分布する。
[菅原 敬 2018年7月20日]