改訂新版 世界大百科事典 「アリモドキゾウムシ」の意味・わかりやすい解説
アリモドキゾウムシ
Cylas formicarius
甲虫目ミツギリゾウムシ科の昆虫。サツマイモの害虫として恐れられており,英名ではsweet potato root-borerまたはsweet potato weevilという。東南アジアが原産地といわれるが,今日では世界の熱帯地方に広く分布し大きな被害を与えている。日本では1910年ごろ,すでに沖縄に分布していたが,南西諸島をしだいに北上し,65年には薩摩半島の南端で発生が確認されている。成虫の体は円筒形で細長いが,一見アリに似るところから,この名がつけられた。頭部は黒色から黒藍色で口吻(こうふん)が前方へ突出する。胸部は赤褐色で後方がくびれる。上翅は青藍色で光沢がある。体長約6mm。6~10月にサツマイモ,ハマヒルガオなどの茎の基部や塊根に産卵,幼虫が潜り込む。幼虫は白色で胸脚や尾突起を欠く。被害を受けたイモ(塊根)は黒斑を生じ,悪臭と苦みで食用とはならない。卵から成虫までの期間は夏では30~40日間。1年間に5~6世代を繰り返すことができる。このゾウムシの分布地域である琉球諸島,台湾,ハワイ諸島などからの寄生可能な植物の輸入は禁止されている。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報