翻訳|lancelet
原索動物門の1綱Cephalochordataを構成する海産無脊椎動物(むせきついどうぶつ)の総称。脊索を終生、体の全長にわたってもつ。つまり、脊索が頭の前端まで達しているのでこの名がある。また、ナメクジウオ類とも総称されるのは、この動物を初めて記載したドイツの博物学者パラスが、腹面の平坦(へいたん)な部分を軟体動物の腹足類の足と同じものと誤解してナメクジの一種とした故事による。実際はナメクジとはおよそかけ離れた魚のような細長い形で、英名(小形の槍(やり)の意)にふさわしい。体長数センチメートル、前・後端はとがり左右にやや扁平(へんぺい)で、頭部は分化せず(このためこの動物群を無頭類Acraniaとよび、それに対応して脊椎動物全体を有頭類Craniataということがある)、目もない。体表を覆う単層の表皮細胞が成体ではクチクラ化して透明になるため、「く」の字形の筋節が多数前後に規則正しく並ぶのが透けてみえる。筋節数は種を識別するときの重要な基準の一つである。左右の筋節の間を脊索が前後に貫き、その背方を全長にわたり中空の脊髄が並走する。この動物の脊索は、細長い筒に硬貨をぎっしり詰めたような、ほかに類をみない構造である。この「硬貨」は横紋筋でできていて脊髄に突起を出して直接これと接し、脊髄からの刺激でこの筋肉が収縮・弛緩(しかん)することで脊索全体の柔軟性が変化するといわれる。この動物が短時間とはいえすばやく体をくねらせ、自在に前進・後退できるのはこのためらしい。
口は体前端腹面に開き、外鬚(がいしゅ)(触手)に囲まれている。咽頭壁(いんとうへき)には100対以上にも達する鰓裂(さいれつ)(えらあな)が整然と並び、囲鰓腔(いさいこう)に開く。鰓裂周縁の繊毛がおこした水流にのって口から流入した食物微粒子は、腹正中にある内柱から分泌され咽頭内壁を広く覆う粘液シートにとらえられて食道に向かう。一方、水は鰓裂から囲鰓腔に出て、体後方腹面に開く出水孔から外界に排出される。囲鰓腔の外壁内にある生殖腺(せん)の内容物も同様にして排出される。肛門(こうもん)は出水孔よりかなり後方に、互いに独立して開く。心臓がないかわりに、血管壁が数か所で拍動して血液(血球はない)を循環させる。
雌雄異体で体外受精し、普通数か月の浮遊幼生期を経て着底、変態したあとは砂中に潜むか、口だけを砂から出して摂餌(せつじ)するという定着的な生活を送り、ときに砂中を短距離移動する程度で、自由に泳ぎ回ることはない。なお、幼形のまま過大成長(ときに成熟)し、着底場所を求めて大洋を漂流する巨大幼生(アンフィオキシデス)も知られている。
既知の2属約34種はすべて浅海性で、大部分は全世界の熱帯から暖温帯に分布する。日本にはナメクジウオBranchiostoma belcheri、オナガナメクジウオAsymmetron lucayanumおよびカタナメクジウオA. maldivenseの3種が知られている。
[西川輝昭]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…約2500種が知られている。 原索動物は脊索の状態によって尾索類Urochordataと頭索類Cephalochordataの2綱に分けられる。尾索類にはホヤ目Ascidiacea,サルパ目(タリア目)Thaliacea,尾虫目(オタマボヤ目)Appendicularia,火体目(ヒカリボヤ目)Pyrosomataの4目が含まれる。…
※「頭索類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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