日本大百科全書(ニッポニカ) 「アロクレース鉱」の意味・わかりやすい解説
アロクレース鉱
あろくれーすこう
alloclasite
つねに少量の鉄(Fe)を含むコバルト(Co)の硫砒(りゅうひ)化物。アロクラス鉱ともいう。砒鉄鉱群に属する。深所生成熱水性鉱脈鉱床中に産し、自然金、自然銀、含コバルト硫砒鉄鉱、閃(せん)亜鉛鉱、グローコドート鉱glaucodot、石英、方解石などと共存する。日本では奈良県吉野郡十津川(とつかわ)村堂ヶ谷(どうがたに)鉱山から報告されている。
同定はb軸に伸びた菱柱(りょうちゅう)状による。これが長く伸び、放射状集合をなすこともある。一見硫砒鉄鉱と似るが、結晶面が出ていると、面が非常に平滑である。グローコドート鉱(直方)と同質異像関係にあるとする見解もあるが、本鉱はこれよりFeに富み、Co:Fe比では重なる領域にない。英名はギリシア語のallos(他の)とklaein(割れ方)を合成した語で、外観上類似する白鉄鉱と異なる劈開(へきかい)をもっていることにちなみ命名された。
[加藤 昭 2015年12月14日]