硫砒鉄鉱(読み)リュウヒテッコウ(その他表記)arsenopyrite

翻訳|arsenopyrite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫砒鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

硫砒鉄鉱
りゅうひてっこう
arsenopyrite

ヒ素(As)の鉱石鉱物としてもっとも普通の硫化鉱物の一つ。中~高温熱水鉱床、気成鉱床、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)中に産するほか、ある種の熱水交代起源の粘土鉱床の粘土(おもに白雲母(うんも)からなる)中に包有されて産する。自形は菱形(ひしがた)断面の斜方柱状ないし短柱状あるいは菱板(りょうばん)状。日本では、大分県大野郡緒方(おがた)町(現、豊後大野(ぶんごおおの)市緒方町)尾平(おびら)鉱山(閉山)の長柱状結晶の集合が有名。愛知県東栄(とうえい)町粟代(あわしろ)鉱山(別名、稲目(いなめ)鉱山)ではいわゆるセリサイト(絹雲母=細粒の白雲母)中に良晶を産する。これらのほか、栃木県足尾鉱山(閉山)、兵庫県生野(いくの)鉱山(閉山)、埼玉県秩父(ちちぶ)鉱山(閉山)などが産地として知られる。理想式FeAsSと比較して、ややヒ素や硫黄(いおう)(S)の多いものもある。鉄(Fe)の一部をコバルト(Co)が置換した変種はデーナ鉱danaiteとよばれ、コバルトの鉱石鉱物として、奈良県十津川(とつかわ)村堂ヶ谷鉱山(閉山)で稼行された。焙焼(ばいしょう)により有毒の三酸化二ヒ素の白煙を発する。英名は成分であるヒ素arsenicと、黄鉄鉱pyriteに類似した外観に由来する。

[加藤 昭 2018年12月13日]


硫砒鉄鉱(データノート)
りゅうひてっこうでーたのーと

硫砒鉄鉱
 英名    arsenopyrite
 化学式   FeAsS
 少量成分  Co,Ni,Sb,Bi
 結晶系   単斜
 硬度    5.5~6
 比重    6.18
 色     銀白~鋼灰
 光沢    金属
 条痕    暗灰黒
 劈開    一方向に明瞭
       (「劈開」の項目を参照)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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