改訂新版 世界大百科事典 「アワフキムシ」の意味・わかりやすい解説
アワフキムシ (泡吹虫)
半翅目アワフキムシ科Cercopidaeに属する昆虫の総称。初夏のころに,いろいろな植物上で白色の泡が見られ,その中に虫がいる。これはアワフキムシの幼虫である。日本に約50種が知られる。成虫はセミに似るが,体長5~18mmくらいと小型で,不透明の革質化した翅をもつ。あまり目だたず,植物について,よく跳躍をする。夏から秋にかけて,植物の組織中や地中に数個ずつまとめて細長い卵を産む。この卵はすぐにかえらず,冬を越して翌年の春に孵化(ふか)する。幼虫は体長10mm前後,植物の道管に口針を刺し,その汁を吸って育つ。そして幼虫の間は,みずからつくった泡の中で生活している。幼虫の腹部両側は内方にまくれて〈ふいご〉のようになっている。尾端から分泌された粘液に,腹部を伸縮させると,ふいごから空気が送られて泡ができる。粘液の物質は安定した糖タンパク質の一種で,泡を長もちさせている。この泡は天敵から身を守り,また体の乾燥を防ぐとされている。幼虫の泡はよく目だつので,ツバキムシ,カエルノツバなどの地方名がある。英名でもcuckoo spit,frog spit,froghopper,spittle insectなどと呼ばれている。またこの泡からホタルが生まれると信じられている地方もある。シロオビアワフキAphrophora intermediaはバラ,マサキ,ヤナギ,クワなどに,マツアワフキA.flavipesはマツに,ホシアワフキA.sticticaはススキ,ヨシに,テングアワフキPhilagra albinotataはアザミ類につく。マダラアワフキAwafukia nawaiの幼虫は地表に露出したスギの根に寄生している。
執筆者:立川 周二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報