日本大百科全書(ニッポニカ) 「アワフキムシ」の意味・わかりやすい解説
アワフキムシ
あわふきむし / 泡吹虫
spittlebugs
froghoppers
昆虫綱半翅(はんし)目アワフキムシ科Aphrophoridaeの総称。アワムシ、ツバキムシなどの地方名もある。春から初夏に、草の茎、葉裏、木の枝などに白い泡の塊をつくり、中に幼虫がすむので知られる。成虫はセミに似るが、小形で体長は6~20ミリメートル。黒褐色か黄褐色で、不明瞭(ふめいりょう)な斑紋(はんもん)があるが、個体変異が大きい。日本には50種以上、世界で約3000種が知られている。
卵で越冬する種が多く、春に幼虫がかえる。成虫は7月ごろから出現する。秋に寄生植物の葉芽、葉鞘(ようしょう)、枝先などに卵を産み付ける。幼虫は植物の汁液を吸収すると、尾端から粘液を出して腹部を伸縮させ、空気を送って泡をつくり、成虫になるまでこの泡の中で育つ。この泡は安定した物質よりなり、容易に壊れることはなく、寄生バチのような天敵から身を守るのに役だつと考えられている。シロオビアワフキAphrophora intermediaは、前翅に白帯があり、日本各地に普通にみられる種で、ヤナギ、マサキ、バラに寄生するほか、柑橘(かんきつ)類やナシなどの養液を吸う害虫とされる。マツアワフキA. flavipesは、5~6月ごろマツの葉のもとに泡に包まれた幼虫がみられる。
[立川周二]