改訂新版 世界大百科事典 「アーチャー」の意味・わかりやすい解説
アーチャー
William Archer
生没年:1856-1924
イギリスの演劇評論家。スコットランドに生まれ,ジャーナリストとなった後,1878年ロンドンに移り雑誌に劇評を執筆した。彼は旧来の型にはまったメロドラマを排して,リアリズムに根ざしたまじめな劇を支持し,また,H.アービングを典型とする俳優の芸に依存した劇に対して脚本が優位を占める劇を主張した。つまり,親友のG.B.ショーが実作を通じて行ったイギリス近代劇確立運動を,理論面で支えようとしたのである。彼のもっとも重要な仕事は1908年に完成したイプセン劇の英訳で,イギリスでは長く標準的上演台本となった。また,国立劇場の建設を唱えたことでも知られる。おもな著書は《仮面か顔か》(1888),《古い劇と新しい劇》(1923)など。戯曲《緑の女神》(1923ロンドン初演)は興行的には成功したが,今では顧みられない。
執筆者:喜志 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報