アーチャー(英語表記)William Archer

改訂新版 世界大百科事典 「アーチャー」の意味・わかりやすい解説

アーチャー
William Archer
生没年:1856-1924

イギリスの演劇評論家。スコットランドに生まれ,ジャーナリストとなった後,1878年ロンドンに移り雑誌に劇評を執筆した。彼は旧来の型にはまったメロドラマを排して,リアリズムに根ざしたまじめな劇を支持し,また,H.アービングを典型とする俳優の芸に依存した劇に対して脚本が優位を占める劇を主張した。つまり,親友のG.B.ショー実作を通じて行ったイギリス近代劇確立運動を,理論面で支えようとしたのである。彼のもっとも重要な仕事は1908年に完成したイプセン劇の英訳で,イギリスでは長く標準的上演台本となった。また,国立劇場の建設を唱えたことでも知られる。おもな著書は《仮面か顔か》(1888),《古い劇と新しい劇》(1923)など。戯曲《緑の女神》(1923ロンドン初演)は興行的には成功したが,今では顧みられない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アーチャー」の意味・わかりやすい解説

アーチャー(Frederick Scott Archer)
あーちゃー
Frederick Scott Archer
(1813―1857)

湿式コロジオン法を考案したイギリスの肖像彫刻家、写真家。初めロンドンで銀細工師となり、のちに肖像彫刻に転じ、制作のかたわらいろいろな研究に手を染めた。湿式コロジオン法とは、写真乾板が実用化されるまで用いられた方法で、光化学反応の迅速化を図るため、薬品類を硝化綿からなるコロジオンを基剤としてガラス板に塗付し、感光板として用いた方法である。1851年アーチャーによって『ケミスト』誌に紹介された。この方法の出現により、それ以前のダゲレオタイプ(銀板写真)やカロタイプ(紙ネガを用いる印画)などが実用から退いた。

[平木 収]


アーチャー(William Archer)
あーちゃー
William Archer
(1856―1924)

イギリスの演劇評論家、劇作家エジンバラで新聞記者となり、1878年ロンドンに出て、以後定期刊行誌をおもな舞台に劇評その他の分野で活躍した。近代リアリズム演劇の熱心な擁護者で、俳優の勝手な演技をいましめ、戯曲が中心であるべきことを説いた。バーナード・ショー親交があり、またイプセンに心酔してその戯曲を英訳してイギリス演劇界に紹介した。アーチャー自身も数編の戯曲を書いたが、メロドラマ風の『緑の女神』(1921)は興行的に大成功を収めた。『新旧演劇比較論』(1923)などの評論集や国民劇場設立運動により、19世紀末から20世紀前半のイギリス演劇界に大きな影響を与えた。

[中野里皓史]

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百科事典マイペディア 「アーチャー」の意味・わかりやすい解説

アーチャー

英国の小説家,政治家。ロンドン市会議員を経て,1969年下院議員になるが,詐欺事件で辞職,借金返済のために書いたコン・ゲーム(詐欺)小説,《百万ドルをとり返せ!》(1976年)がベストセラーになる。他に暗殺物の《大統領に知らせますか?》(1977年)や,《ケインとアベル》(1979年),《めざせダウニング街10番地》(1984年)などの成功物語もある。1985年には保守党副幹事長に任命されるが,翌年女性スキャンダルで辞職した。

アーチャー

英国の演劇評論家。スコットランド生れ。ジャーナリストとして出発し,ロンドンで劇評を書いた。イプセンを翻訳紹介,G.B.ショーを擁護するなど英国近代劇確立運動を推進した。アイルランド国民演劇運動にも尽力。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アーチャー」の意味・わかりやすい解説

アーチャー
Archer, William

[生]1856.9.23. パース
[没]1924.12.27. ロンドン
イギリスの演劇評論家。リアリズムを基調とする立場から劇評を執筆。批評活動およびイプセンの戯曲の翻訳を通じて,イギリス近代劇の成立に大いに貢献した。主著『仮面か素顔か』 Mask or Faces? (1888) ,『古い演劇と新しい演劇』 The Old Drama and the New (1923) 。

アーチャー
Archer, Thomas

[生]1668頃
[没]1743.5.23. ロンドン
イギリス 18世紀の建築家。 J.バンブラ,N.ホークスムアに続くイギリス・バロックの代表者の一人で,バーミンガムのセント・フィリップ聖堂 (1710~15) ,デットフォードのセント・ポール聖堂 (12~30) ,ウェストミンスター,スミス広場のセント・ジョン聖堂 (14~28) が代表作。

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