アーバス(読み)あーばす(英語表記)Diane Arbus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アーバス」の意味・わかりやすい解説

アーバス
あーばす
Diane Arbus
(1923―1971)

アメリカの写真家。1960年代、無名の人々を路上で撮影するなど、ドキュメンタリー技法で現代人の精神の内奥をえぐる写真作品を制作、発表し、現代写真に新たな境地を開いた。ニューヨークの裕福な商家に生まれ、カメラマンと結婚したのを機に写真を始め、離婚後女性ドキュメンタリー写真家のリゼット・モデルLisette Model(1901―1983)に師事、本格的に写真家として歩み始める。アーバスは、市街地の路上や、近郊住宅地にさまざまな人物像を求め、写真で人間の心に潜む邪悪さを摘出しようとした。異常な生、異形(いぎょう)の生を凝視するその作品は写真界に衝撃を与えた。1967年にニューヨーク近代美術館が開催した「ニュードキュメンツ」展で、フリードランダーLee Friedlander(1934― )、ウィノグランドGarry Winogrand(1928―1984)とともに、芸術としてのドキュメンタリー写真のあり方を社会に示し、幅広い人気を獲得する。しかし1960年代後半からしだいに情緒の安定を失い、1971年に突然短銃自殺を遂げた。1972年同美術館で大回顧展が開催された。

[平木 収]

『パトリシア・ボズワース著、名谷一郎訳『炎のごとく――写真家ダイアン・アーバス』(1990・文芸春秋)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アーバス」の意味・わかりやすい解説

アーバス
Arbus, Diane

[生]1923.3.14. ニューヨーク,ニューヨーク
[没]1971.7.26. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の写真家。本名 Diane Nemerov。1940年代に写真を始めた。1960年『エスクアイア』誌に『バーティカル・ジャーニー』を発表,以後多く雑誌で活躍するようになった。独特な雰囲気を漂わせたポートレートなどで知られた。

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