日本大百科全書(ニッポニカ) 「イェーガー」の意味・わかりやすい解説
イェーガー
いぇーがー
Werner Wilhelm Jäger
(1888―1961)
ドイツの古典文献学者。バーゼル(1914)、キール(1915~1921)、ベルリン(1921~1936)の各大学で教えた。ナチスのドイツ征覇後、1936年アメリカに渡り、シカゴ、ハーバード両大学で教えた。最初の著作『アリストテレス形而上(けいじじょう)学成立史の研究』(1912)では、『形而上学』が時期を異にする数段階の諸論稿の集成であることを論証し、主著『アリストテレス――その発展史の基礎づけ』(1923)では、この研究を倫理学、政治学、自然学の領域にも広げ、アリストテレスの哲学が初期著作断片にみられるプラトン主義から脱皮してアリストテレス固有の哲学にしだいに展開していく過程を克明にたどった。この発展史的研究は、その後長くほぼ1950年代に至るまでのアリストテレス研究の動向を支配したが、今日ではこれを批判または修正する見解もある。ほかにギリシア的教養の成立とそのキリスト教古代への継承に関する優れた業績を残し、ヒューマニズムの理想を説いて大きな影響を与えた。
[加藤信朗 2015年2月17日]