改訂新版 世界大百科事典 「イェーナ」の意味・わかりやすい解説
イェーナ
Jena
ドイツ中部,チューリンゲン州の都市。人口10万2000(1995)。カール・ツァイス(通称カール・ツァイス・イェーナ社)の顕微鏡,精密測定機具などのほか,高性能ガラス,薬品製造が盛ん。ヨハニス教会(11世紀),市庁舎(14世紀)のある旧市街と今に残る城壁の一部,ツァイス社を中心とする新市街がザーレ川の谷あいに調和よく町を形成している。14世紀に自治権を得て,ブドウ栽培と取引を中心に栄える。1558年創立のイェーナ大学(現,フリードリヒ・シラー大学)は,市が1741年ワイマール公国領となり,カール・アウグスト公のもとでゲーテが活躍するに及んで,ドイツ文化の中心の一つとなった。シラー,フィヒテ,シェリング,シュレーゲル兄弟,ヘーゲル,ティークら,18世紀後半~19世紀初めのドイツの代表的思想家・文学者がこの大学で講じた。ゲーテもしばしばここを訪れた。1806年イェーナの戦でプロイセン軍がナポレオンの率いるフランス軍に大敗を喫したのち,15年イェーナ大学学生はドイツの自由と統一を求める学生団体ブルシェンシャフトを全ドイツに先がけて結成した。41年K.マルクスはこの大学で学位を得た。1862-1907年E.H.ヘッケルがここで動物学を講じた。ツァイスが1846年に始めた精密・光学機器とくに顕微鏡の生産は,19世紀末以降急速に発展し,この町を世界的に有名にした。第2次大戦後,アメリカ軍がツァイス社のスタッフを西ドイツに移したが,イェーナに存続した工場は,現在も活発な生産を続けている。中央地震研究所,精密機械・光学専門学校などがある。
執筆者:下村 由一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報