改訂新版 世界大百科事典 「イシノミ」の意味・わかりやすい解説
イシノミ (石蚤)
bristletails
シミ目イシノミ亜目Microcoryphiaに属する昆虫の総称。岩石上にいて跳ねる習性のためこの名がある。原始的昆虫の一つで,腹節に脚の一部である基節板を残す。体長5~20mm。和書の害虫のシミと形が似るが,体は扁平でない。体色は灰褐色で,黒や白の斑紋をもつが,これらの色は体表に生えている鱗片による。口,触角などの構造は有翅昆虫に近いが,腹部には多足類にある腹刺と腹胞をもつ。山や海岸の岩,日陰の樹幹,落葉下などにすみ,陸生藻類を主食とする。吸水法は特殊で,湿った面に腹部を接し,袋状の腹胞を体外に反転させ,その薄膜から直接体腔に吸水する。寿命は雌雄とも2~3年。成虫も脱皮を繰り返し,わずかずつ成長する。雌雄向き合い左右交互の回転ダンスを続けた後,雄が精子滴をのせた細糸を空中に張り,雌を誘導して産卵管にとり上げさせる風変りな配偶行動を行う。薄明薄暮に活動。多足類と有翅昆虫類をつなぐ系統上の重要群であるが,人の生活とは関係がない。
代表種のヒトツモンイシノミPedetontus unimaculatusは体長12~18mm。灰褐色で黒,白の模様をもつ。関東以西に分布し,日陰の岩,常緑樹の樹幹,落葉上に生息する。行動が比較的敏しょうでなく飼育しやすい。
執筆者:堤 千里
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報