イスラム金融(読み)いすらむきんゆう

共同通信ニュース用語解説 「イスラム金融」の解説

イスラム金融

イスラム教に沿った金融取引の総称聖典コーラン」が利息の受け取りを禁じているため、金融機関融資に当たる「ムラバハ」といった仕組みを使い、手数料の形などで収益を得る。住宅ローンを例に取ると、銀行が顧客の代わりに住宅を購入して顧客に割賦販売する。金利分は毎月の支払額に上乗せした手数料として請求する。債券リースに相当する取引はそれぞれ「スクーク」、「イジャーラ」と呼ばれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イスラム金融」の意味・わかりやすい解説

イスラム金融
いすらむきんゆう

イスラム教の戒律に反しないよう配慮した金融商品や金融取引。聖典「コーラン」とイスラム法シャリーア」に基づき、利子をとらず、豚肉酒類ポルノ、賭博関係への投資を回避するなど、一般の金融とは異なる特徴をもつ。たとえば銀行の住宅ローンは資金を貸し付けて利子をとるので、イスラムの戒律に抵触する。イスラム金融では銀行と顧客が共同で住宅を買い上げ、その後、顧客が分割払いで代金(利子分を含む)を銀行に払い、所有権を徐々に増やしていく「ムラバハ」という手法をとる。このほかイスラム債券「スクーク」、相互扶助の考えを取り入れたイスラム保険「タカフル」などの手法もある。近年のオイルマネーの隆盛を背景に、イスラム金融市場は急成長している。

 古くからイスラム金融はあったが、とくに2001年9月のアメリカ同時多発テロ以降、産油国資本のイスラム回帰の流れでイスラム金融取引が活発になった。原油相場の高騰もあって市場規模は1兆ドル程度と推計される。イスラム金融の中心地であるマレーシアのほか、バーレーンをはじめとする中東湾岸諸国の成長も目だち、年率20%前後の成長を遂げているとされる。イスラム教徒以外も利用できるため、膨張する中東マネーを環流する手段として、欧米アジア各国がイスラム金融の振興に努めている。日本でも2007年(平成19)に、酒類や豚肉などを扱う企業などを除いた日本企業のイスラム株価指数の算出が始まった。

[編集部]

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