日本大百科全書(ニッポニカ) 「イタチウオ」の意味・わかりやすい解説
イタチウオ
いたちうお / 鼬魚
barbed brotula
weasel fish
[学] Brotula multibarbata
硬骨魚綱アシロ目アシロ科に属する海水魚。和名は、顔つき、口の周りにあるひげ、体色などがイタチに似ていることに由来する。千葉県および新潟県以南の南日本および、インド・西太平洋の沿岸に広く分布する。体は比較的太短く、尾部は側扁(そくへん)する。吻(ふん)と下あごにそれぞれ6本のひげがある。背びれ、尾びれ、臀(しり)びれは連続し、腹びれは2軟条で、喉位(こうい)にあり、先端が二つに分かれる。皮膚と鰭膜(きまく)は小円鱗(しょうえんりん)で覆われる。体は茶褐色で、腹部は淡色。各ひれの縁辺は白い。体長60センチメートル余り。浅海の岩礁地帯やサンゴ礁域の割れ目などを好んで生息し、ときには潮だまりにもみられる。産卵期は7~8月で、産卵は浅所で行う。卵の直径は0.8~1.1ミリメートルの大きさで、1個の油球をもつ。産出卵は2~7個が寒天質の卵嚢(らんのう)に包まれて海中を浮遊し、孵化(ふか)前に卵嚢から離れる。稚魚は浮遊生活をする。成魚は釣りや刺網(さしあみ)で漁獲される。肉は白身で、かなり美味で吸い物種などにされる。
アシロ科の魚は日本の海域から約36種類が知られるが、イタチウオ以外はすべて深海性。もっとも大形の種類はヨロイイタチウオで、ほぼ1メートルに達する。機船底引網で漁獲され、肉質は柔らかく冬季には美味。
[岡村 收・尼岡邦夫 2015年11月17日]