日本大百科全書(ニッポニカ) 「イノコズチ」の意味・わかりやすい解説
イノコズチ
いのこずち / 牛膝
[学] Achyranthes bidentata Bl. var. japonica Miq.
ヒユ科(APG分類:ヒユ科)の多年草。林縁や山野の木陰に生え、ヒカゲイノコズチともいう。全草無毛で根茎は肥厚しない。茎は高さ0.5~1メートル、対生する分枝を出し、四角で節が膨れる。葉は対生して有柄、長楕円(ちょうだえん)形で質は薄く、長さ10~20センチメートル、幅4~10センチメートル。花は淡緑色で無柄、8~9月に枝先または葉腋(ようえき)から出た細長い花軸の先に穂状につく。小包葉は2枚で針状にとがり、基部に長さ約6ミリメートルの丸い膜状付属体をもつ。花被(かひ)は5枚で長さ4~5ミリメートル、緑色でやや乾膜質、線状披針(ひしん)形で先は鋭くとがる。雄しべは5本で基部は合着し、雌しべは1本。胞果は宿存性の花被に包まれ、同形の1種子が入り、果期には果軸を離れ衣服などにつきやすい。本州、四国、九州に分布。名は、茎の膨れた節をイノシシの脚(あし)の膝頭(ひざがしら)に見立てたものといわれる。海岸型で無毛の変種にハチジョウイノコズチがある。
[小林純子 2021年1月21日]
本種およびヤナギイノコズチA. longifolia Makinoの根を漢方では牛膝(ごしつ)といい、浄血、消腫(しょうしゅ)、強壮剤として月経困難、血尿、腫(は)れ物、打ち身、足腰の痛み、四肢麻痺(まひ)の治療に用いる。
[長沢元夫 2021年1月21日]