インターンシップ(読み)いんたーんしっぷ(英語表記)internship

翻訳|internship

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インターンシップ」の意味・わかりやすい解説

インターンシップ
いんたーんしっぷ
internship

学業についている者が企業や官公庁などで一定期間、就業体験をすること。実際の仕事につくことで、自らの専攻や将来の職業選択に生かすねらいがある。職場見学から、業務体験、企画立案まで、その内容は幅広い。通常、教育実習や医療実習などはインターンシップに含まれない。文部科学省の調査では、2019年度(令和1)にインターンシップを実施した大学・短期大学・高等専門学校は全体の88%に達し、体験学生数は79万人を超えている。おもに大学生、短大生、高等専門学校生を対象とするが、高校生にも広がっている。就業期間は夏休みなどの1週間~1か月が主流だが、半年を超すものもある。有給無給両方があり、インターンシップ参加を単位として認定する大学が実施大学の7割に達している。

 20世紀初頭にアメリカの大学で始まった仕組みで、自分が専攻する学問が社会でどのように生かされているかを職場で確かめ、学問に生かす試みであった。日本でもインターンシップの普及を後押しするため、政府は1997年(平成9)に基本ルール「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を定め、一貫して「インターンは採用活動ではない」との姿勢を崩していない。ただ近年、単なる単位取得や就職に有利との理由でインターンシップを利用する学生が増え、採用側でも採用活動解禁前にいち早く学生との接点をつくり、優秀な人材青田買いするねらいで活用する企業が増えている。また、日本経済団体連合会(経団連)と国公私立大学トップによる直接対話のために立ち上げられた「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は、2022年4月に発表した報告書で、インターンシップについての新たな定義を定めるとともに、インターンシップで得られた学生情報を採用活動開始後に活用可能とすることで産学が合意に至ったとして、基本ルールの見直しを求めた。これを受けて政府は2022年、条件付きで参加学生の情報を企業が採用の判断材料として活用することを容認した。2022年度の大学2年生からが対象で、インターンシップの(1)実施期間は一般に5日間以上、専門能力重視の場合には2週間以上、(2)実施時期は夏休みなどの長期休暇期間中、(3)実施期間の半分超の日数を職場での就業体験にあてる(テレワークを含む)、(4)終了後、学生の評価などを本人にフィードバックする、(5)募集要項などで公表する、などの条件を満たす必要がある。ルール改正により、インターンシップで評価の高かった学生に優先的に募集案内を出したり、1次・2次試験を省略して役員面接のみで採用したりといった企業が増えそうで、労働界などから「青田買いを助長しかねない」などの批判が出ている。

[矢野 武 2022年11月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インターンシップ」の意味・わかりやすい解説

インターンシップ
internship

おもに医科大学あるいは大学の医学部を卒業した者が,医師としての必要な診療経験を積むために研修医(インターン)として病院に勤務すること,あるいはその研修期間,研修システム。今日では医学の分野にかぎらず,さまざまな職業において一人前になるまでの見習いの地位,あるいはその期間をさすこともある。日本では,大学生などが本格的な就職活動を始める前に一定期間企業で就業体験をする制度をさし,1997年に政府が産学連携による人材育成を目的として導入の推進を始めた。

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