学生が企業での就業体験を通じて仕事や職場への理解を深める機会。数日から3カ月以上のものまで、さまざまな期間で実施されている。一部の企業では事実上の選考につながっている現状があるため、政府は採用選考とは異なるものだと明確にするよう企業に求めている。経団連と大学でつくる産学協議会は、1日限りのプログラムに関しては就業体験が十分にできないとして「インターンシップ」の名称を使わないことを決めている。
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[インターンシップとは]
日本においてインターンシップは,後述するいわゆる三省合意において「学生が在学中に自らの専攻,将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と定義されている。インターンシップという言葉が政府の文書に最初に登場したのは「教育立国を目指して」(1997年1月)の中であり,インターンシップの総合的な推進が盛り込まれ,さらに「経済構造の変革と創造のための行動計画」(1997年5月閣議決定)では,産学連携による人材育成策としてその推進が盛り込まれた。これらを受け,当時の文部省,通商産業省,労働省においてインターンシップのより一層の推進を図るため,インターンシップに関する共通した基本的認識や推進方策を取りまとめた「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方(日本)」(1997年9月,以下「三省合意」という)を発表し,政府,大学,産業界においては,この三省合意に沿ってインターンシップの普及・推進を図ってきた。
しかしながら,従来,教育実習,医療実習,看護実習など特定の資格取得を目的として実施しているものや,資格取得と関連性はないが,専門をより深めるための工場実習などは大学において実施されてきた。たとえば教育実習については,1873年(明治6)に東京師範学校において実施されており,第2次世界大戦後は1949年(昭和24)の教育職員免許法および同施行規則において義務付けられている。工場実習についても,戦前から盛んに行われていた。アメリカ合衆国においては,大学が主導で管理運営するものをコーオプ教育(アメリカ)(cooperative education),企業等が主導で管理運営するものをインターンシップといい,両者を区別することが一般的であるが,日本では両者をともにインターンシップと称している場合が多い。
[インターンシップの現状]
文部科学省では,1997年(平成9)より「インターンシップ実施状況調査」をすべての大学および高等専門学校を対象に実施してきた。さらに2011年度からはこれを拡充して調査を実施している(2013年6月公表)。最新の2015年度の結果によると,単位認定を行う授業科目か否かは問わずインターンシップを実施している大学は93.4%となっている(特定の資格取得に関連するもの,関連しないものの両者を含めた実施割合)。また,単位認定を行う授業科目として実施されるインターンシップに参加している学生の割合は22.2%で,そのうち特定の資格取得に関連しないものは3.1%,特定の資格取得に関連するものは19.1%となっている。つまり,ほとんどの大学で何らかのインターンシップを実施しているものの,参加学生はその一部にとどまっている。さらに実施期間をみると,特定の資格取得に関連しないものでは,1~2週間未満が38.2%となっており,1週間未満の37.3%と合わせると約4分の3が2週間未満である。海外のインターンシップやコーオプ教育では数ヵ月が一般的であるのに対し,極端に短期間であることが日本の特徴といえよう。
[インターンシップの課題]
今後の拡充に向けてさまざまな課題が指摘されている。第1は量的な課題である。参加学生の割合はまだ少なく,その拡大が求められている。そのためには,受入れ先である企業等の確保や学生の希望業種・職種と受入れ企業のミスマッチの軽減が必要である。第2は質的な課題である。上述したように,日本の学生のインターンシップは短期が中心といえる。また,その内容・目的も職業意識・就労観の醸成が中心であり,専門教育との関連性が希薄であることが指摘されている。上記の量的および質的な課題に対応するためには,受入れ企業の開拓やプログラムの構築が不可欠であるが,これらを担う専門的な知見を有する人材の不足が第3の課題である。
第4の課題は就職との関連で,三省合意では「インターンシップと称して就職・採用活動そのものが行われることにより,インターンシップ全体に対する信頼性を失わせるようなことがない」ようにと記述されており,インターンシップと就職を関連付けることはいわばタブー視されているが,現実的には結果としてインターンシップ先に就職しているケースもある。インターンシップ実施における企業側のメリットを鑑みると,インターンシップと就職の関係についても検討が必要であろう。第5の課題は,インターンシップの効果についてである。インターンシップの参加者数は徐々に拡大を示しているが,その効果についての計測,研究が不十分である。インターンシップが推進されるようになってからまだ20年程度であり,その継続的な効果の把握が今後も求められる。
著者: 亀野淳
参考文献: 高良和武監修,石田宏之・太田和男・古閑博美・田中宣秀編著『インターンシップとキャリア―産学連携教育の実証的研究』学文社,2007.
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
学業についている者が企業や官公庁などで一定期間、就業体験をすること。実際の仕事につくことで、自らの専攻や将来の職業選択に生かすねらいがある。職場見学から、業務体験、企画立案まで、その内容は幅広い。通常、教育実習や医療実習などはインターンシップに含まれない。文部科学省の調査では、2019年度(令和1)にインターンシップを実施した大学・短期大学・高等専門学校は全体の88%に達し、体験学生数は79万人を超えている。おもに大学生、短大生、高等専門学校生を対象とするが、高校生にも広がっている。就業期間は夏休みなどの1週間~1か月が主流だが、半年を超すものもある。有給と無給の両方があり、インターンシップ参加を単位として認定する大学が実施大学の7割に達している。
20世紀初頭にアメリカの大学で始まった仕組みで、自分が専攻する学問が社会でどのように生かされているかを職場で確かめ、学問に生かす試みであった。日本でもインターンシップの普及を後押しするため、政府は1997年(平成9)に基本ルール「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を定め、一貫して「インターンは採用活動ではない」との姿勢を崩していない。ただ近年、単なる単位取得や就職に有利との理由でインターンシップを利用する学生が増え、採用側でも採用活動解禁前にいち早く学生との接点をつくり、優秀な人材を青田買いするねらいで活用する企業が増えている。また、日本経済団体連合会(経団連)と国公私立大学トップによる直接対話のために立ち上げられた「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は、2022年4月に発表した報告書で、インターンシップについての新たな定義を定めるとともに、インターンシップで得られた学生情報を採用活動開始後に活用可能とすることで産学が合意に至ったとして、基本ルールの見直しを求めた。これを受けて政府は2022年、条件付きで参加学生の情報を企業が採用の判断材料として活用することを容認した。2022年度の大学2年生からが対象で、インターンシップの(1)実施期間は一般に5日間以上、専門能力重視の場合には2週間以上、(2)実施時期は夏休みなどの長期休暇期間中、(3)実施期間の半分超の日数を職場での就業体験にあてる(テレワークを含む)、(4)終了後、学生の評価などを本人にフィードバックする、(5)募集要項などで公表する、などの条件を満たす必要がある。ルール改正により、インターンシップで評価の高かった学生に優先的に募集案内を出したり、1次・2次試験を省略して役員面接のみで採用したりといった企業が増えそうで、労働界などから「青田買いを助長しかねない」などの批判が出ている。
[矢野 武 2022年11月17日]
出典 マイナビ2012 -学生向け就職情報サイト-就活用語集(就活大百科 キーワード1000)について 情報
(新井郁男 上越教育大学名誉教授 / 2007年)
(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報
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出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…ある職業について,その資格を最終的に取得するのに先だって実地訓練を課することがある。そうした制度をインターンシップinternshipといい,その研修生をインターンと呼ぶ。一般には医師の場合を指して用いられることが多いが,同様の制度は美容師,理容師の場合にも見られる。…
※「インターンシップ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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