日本大百科全書(ニッポニカ) 「インダントロン」の意味・わかりやすい解説
インダントロン
いんだんとろん
indanthrone
1901年にドイツのBASF社のボーンRené Bohn(1862―1922)が、アントラキノン核をもつインジゴ系染料を研究中に合成した、最初のアントラキノン系のバット染料。化学構造はインジゴ型とはまったく異なり、1,4-ジアジン環をもつ。インダンスレンブルーRSNの商品名で市販された。これは従来に類例をみないほどの堅牢(けんろう)な染料であった。この染料の合成以後、多くの優れたバット染料がつくられるようになり、染料工業上に果たした意義はきわめて大きい。のちに堅牢で高級なバット染料にインダンスレンindanthreneの名が与えられるようになったので、インダンスレンブルーRSNをさすときにはインダントロンということが多い。今日も多く使用されているが、単価が高いため使用範囲は限られている。青色顔料としての利用もある。
[飛田満彦]