ウシアブ(英語表記)Tabanus trigonus

改訂新版 世界大百科事典 「ウシアブ」の意味・わかりやすい解説

ウシアブ
Tabanus trigonus

双翅アブ科の昆虫。牧場などで牛や馬などを襲って吸血する大型のアブ。体長22~28mm。全体に灰黒色または灰褐色。胸背の地色は黒色で黄色の毛で覆われる。胸背の前半部に3本の褐色の縦線がある。単眼はなく触角鞭節は橙赤色である。北海道から九州まで日本全土に分布し,山地性。成虫の発生期は6~9月。卵は放牧地の草上や牛舎の天井,窓枠などに数段階の三角錐状の黄色卵塊として産みつけられる。1卵塊の総卵数は500~600個,約1週間後に孵化(ふか)する。幼虫は肉食性で,草原や森林内の土中ミミズなどを食べる。幼虫期間は長く,約2年である。雌成虫のみが吸血し,雄は樹液などを吸って生活している。雌の吸血活動は,昼間盛んで,牛などの腹部や体後半部を襲う。家畜,とくに放牧牛などがアブに襲われると精神的に不安定となり,乳量がおちるといわれている。吸血量は200~400mgである。近似種が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウシアブ」の意味・わかりやすい解説

ウシアブ
うしあぶ / 牛虻
[学] Tabanus trigonus

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目アブ科に属する昆虫。日本各地に普通にみられる大形のアブで、体長22~29ミリメートル。体は紫褐色を帯びる。単眼は欠失し、中額瘤(がくりゅう)は線状で、下額瘤は楕円(だえん)形。触角の先端鞭節(べんせつ)は橙赤(とうせき)色で、基部関節は黒色。腹部中央には黄白色の三角斑(はん)がある。成虫は7~9月に出現し、ウシウマなど放牧中の家畜を襲撃して吸血する。一方、カブトムシクワガタムシなどとともに雑木林の樹液にも好んで集まる。卵は三角錐(さんかくすい)状の卵塊で、放牧地の草や牧舎の板塀などに産み付けられる。卵は約1週間で孵化(ふか)し、幼虫は肉食性で、土中でミミズなどの小動物を捕食する。幼虫期は長く、翌年の夏に蛹化(ようか)し、羽化する。

倉橋 弘]


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百科事典マイペディア 「ウシアブ」の意味・わかりやすい解説

ウシアブ

双翅(そうし)目アブ科の昆虫の1種またはその近縁種の総称。1種をさす場合,体長27mm内外,灰色地に暗色の斑紋があり,雄の腹部両側は茶色をおびる。日本各地に多く,雌は人畜を吸血,雄は花や樹液に集まる。幼虫は水辺の泥土中にすみ肉食。成虫は主として夏に現れる。→アブ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウシアブ」の意味・わかりやすい解説

ウシアブ
Tabanus trigonus

双翅目アブ科。体長 25mm内外の大型種。全体に黒灰色で,腹部の各背板中央に黄白色の大きな三角斑がある。単眼を欠き,翅には斑紋がない。成虫は7~9月に現れ,雌は好んでウシ,ウマを襲って吸血する。北海道,本州,四国,九州に分布する。 (→アブ )

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世界大百科事典(旧版)内のウシアブの言及

【アブ(虻)】より

…本種の発生期には山仕事を休む地方もあるくらいで,オロロ,テジロなどとも呼ばれている。牛馬を好んで襲うものに,灰黒色から灰褐色のウシアブ(イラスト),黄灰色から黒色で体長2~3cmのアカウシアブなどがある。人を刺し吸血するものには,翅に黒色斑のあるメクラアブ(イラスト),灰色で中型のシロフアブ,ゴマフアブなどがある。…

※「ウシアブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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