ウデヘ族(読み)ウデヘぞく(英語表記)Udekhe

改訂新版 世界大百科事典 「ウデヘ族」の意味・わかりやすい解説

ウデヘ族 (ウデヘぞく)
Udehe

ロシア連邦,極東地域の原住民。人口1900(1989)。ロシア人はウデゲイUdegeitsyと呼ぶが,自称はウデヘまたはウデエUdeeで,ツングース諸語の一つであるウデヘ語を話す。かつては,ウスリー川,アムール川の支流域沿海州の森林地帯で,夏には川漁,冬には狩猟,テン(貂)猟をしながら移動生活をしていた。親族組織は父系的な氏族を基本とし,氏族外婚,殺人に対しては氏族間の血讐が行われ,争いごとは氏族を代表する弁士を立て弁舌によって決裁された。森羅万象に超自然的存在を認め崇拝するアニミズムの観念が濃厚で,それがさまざまな儀礼と結びついていた。虎と熊には特別な畏敬の念がもたれていたが,ウデヘ族の起源神話では両者は始祖として語られている。熊送り(熊祭),シャマニズムはアムール川地域の他のツングース語系諸族とも共通していた。チョウセンニンジン,鹿の袋角,テンの毛皮は,古来中国人との重要な交易品であった。今日では伝統文化の多くは,博物館で見られるのみである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウデヘ族」の意味・わかりやすい解説

ウデヘ族
ウデヘぞく
Udekhe

ウデエ族,ウデゲイ族ともいう。ロシア極東部の沿海州,ウスリー川およびアムール川の右岸支流域に居住する少数民族。人口約 2000。ウデヘ語を話すが,この言語はアルタイ諸語のツングース=満州語派に分類される。オロチ族ナーナイ族と隣接していることもあって,19世紀の文献では独立の民族として扱われていないが,古代中国の史書に韃子 (ターズ) として知られた住民の一部はこのウデヘに相当する。この地域の住民の多くが河川の流域に半定住生活を営み,漁労を主たる生業としているのに対し,ウデヘ族は森林動物の狩猟を基本とする放浪生活を特徴としていた。また,古くより彼らの採集する朝鮮人参は重要な交易品の一つであった。ソ連時代には,狩猟を主体とするコルホーズを組織した。

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世界大百科事典(旧版)内のウデヘ族の言及

【ツングース諸語】より

…A群:(1)エベン語Even(またはラムート語Lamut),(2)エベンキ語Evenki(狭義のツングース語),(3)ソロン語Solon,(4)ネギダール語Negidal。B群:(5)ウデヘ語Udehe,(6)オロチ語Orochi。C群:(7)ナナイ語Nanai(またはゴリド語Gol’d),(8)オルチャ語Olcha(またはウリチ語Ul’chi),(9)ウイルタ語(オロッコ語)。…

【ツングース語系諸族】より

…そのうち,ナナイ族ウリチ族オロチ族ネギダール族は,アムール川の中・下流域に定住し,サケ・マス漁を主とする漁労文化を発達させてきた。また,沿海州のウデヘ族は移動生活を送りながら,森林獣の狩猟と河川での漁労を営んだ。ウイルタ族(オロッコ族)はサハリン東部で少数のトナカイを飼い,これを移動・運搬の手段として狩猟や漁労に携わってきた。…

※「ウデヘ族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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