日本大百科全書(ニッポニカ) 「うなり」の意味・わかりやすい解説
うなり
beat
振動数の値がわずかに違う二つの振動が重なるとき、二つの振幅がだいたい同じ大きさである場合には、振動が周期的に強くなったり弱くなったりする。これをうなりという。振動数がわずかに違う二つの音叉(おんさ)の放つ音波には、うなりが生ずる。日本の寺の釣鐘の音には、うなりの聞かれるものが少なくない。うなりには、振幅が最大となる腹(はら)と振幅が最小となる節(ふし)が次々に現れる。うなりの周期は、二つの振動の振動数の差の逆数に等しい。したがって、二つの振動数の差が小さくなると、うなりの周期が長くなり、二つの振動数が一致すれば、うなりは生じなくなる。うなりのこのような性質は、楽器の調律に利用される。うなりがもっともはっきりするのは、二つの振動の振幅が等しく、節における振幅がゼロとなる場合である。うなりは、位相速度ではなく、群速度とよばれる速度で進行する。
[飼沼芳郎]