改訂新版 世界大百科事典 「ウバタマムシ」の意味・わかりやすい解説
ウバタマムシ
Chalcophora japonica
甲虫目タマムシ科の昆虫。別名オバタマムシ。体長35mm内外。雌雄ともに背面は金銅色で上翅に暗色の隆起条がある。本種は俗にタマムシの雌といわれるが,まったくの別種である。本州から南に分布するが,奄美諸島や沖縄に生息するものは緑色を帯び,隆起条の間の点刻が密であることからアオウバタマムシと呼ばれ,本種の亜種として扱われている。また本州の紀伊半島,四国,九州から八重山諸島にかけて,本種に類似するサツマウバタマムシC.yunnanaが知られている。ウバタマムシ類の幼虫は枯れた針葉樹の材部を奥深くまで食べ進む。卵から成虫までに2~3年を要する。幼虫は白色,細長いからだは前胸節が著しく幅広く,その形態はタマムシに類似する。ウバタマムシはマツの倒木や切株に産卵するため,5~8月にかけて松林に多く見られ,日中は活発に飛びまわる。とくにマツクイムシによって大きな被害をうけた西日本の松林では多い。成虫はマツの花粉を好んで食するといわれる。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報