ウルカヌス(読み)うるかぬす(英語表記)Vulcānus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルカヌス」の意味・わかりやすい解説

ウルカヌス
うるかぬす
Vulcānus

古代ローマの火神。ローマの守護神としての性格も備えていたらしいが、その名の由来は早くから不明とされている。その祝祭「ウルカナリア」Vulcānālia(8月23日)は、ローマでも最古の祭日に数えられており、ウルカヌス信仰はきわめて古くからあったと推察される。ウルカナルとよばれる祭祀(さいし)の場所がカピトルの丘の斜面にあったが、これはローマ建国のロムルス伝説ではかなり重要な役割をもった。しかしそこには神殿がなく、祭壇の設けられた「ウルカヌスの広場」と称される空き地であった。ウルカナリアの祭典について伝えられている唯一の儀式は、生きている魚を火中へ投ずるというもので、灼熱(しゃくねつ)の神として、8月の炎熱期と渇水期が重なる時節、つまり収穫期にとくに畏怖(いふ)されたとも考えられる。のちに、ギリシアヘファイストスと同一視された。

[伊藤照夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルカヌス」の意味・わかりやすい解説

ウルカヌス
Vulcanus

ギリシア神話ヘファイストスと同一視された古代イタリアの火の神。元来は,家の中央でかまどの火として祀られたウェスタに対し,火事噴火の原因ともなる猛火を神格化した存在で,市の城壁の外で祀られ,外敵悪霊などの侵入から市を守る働きをすると信じられた。のちにローマの建設される場所で,ゲリュオンの牛をギリシアに連れ帰る途中そこを通ったヘラクレスに退治された,口から火を吐いたという3頭の巨人カクスは,ウルカヌスの息子とされる。

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