日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェスタ」の意味・わかりやすい解説
ウェスタ
うぇすた
Vesta
ローマ神話の竈(かまど)の女神。ギリシアのヘスティアと同一視された。ウェスタは円形の祠堂(しどう)に祀(まつ)られているが、その神像はなく、永遠に消えぬ火が崇拝の対象となった。家庭で崇拝されるとともに、国家の竈の神とされ、その神殿ではウェスタリスとよばれる処女の祭司たちによって絶えず火が保たれていた。この祭司団は、ロムルスの母でウェスタの巫女(みこ)であったレア・シルウィアをたたえて、ヌマ王が設立したものである。ウェスタは、ローマの神々のうちでもっとも古い系列に属する。また、ギリシアのヘスティアとは語源、祭祀(さいし)上から同源であり、ギリシア語、ラテン語の分離以前から崇拝の対象とされていた。
[小川正広]