オサバグサ(その他表記)Pteridophyllum racemosum Sieb.et Zucc.

改訂新版 世界大百科事典 「オサバグサ」の意味・わかりやすい解説

オサバグサ
Pteridophyllum racemosum Sieb.et Zucc.

中部地方から東北地方の亜高山針葉樹林に,所によって群生する小型のケシ科多年草。1属1種で日本特産。6~7月の開花期には,小さな白い花(径1cm弱)が群がり咲き,暗い林床にひときわ清楚で美しい。属名Pteridophyllumは〈シダの葉〉を意味し,くしの歯状に切れ込む葉(長さ15cmほど)が短い地下茎に根生する様子はシダに似る。和名はこの葉形を織機の筬(おさ)にみなしたもので,同様の名をもつものにオサシダがある。雪解けとともに開く新葉は2年の寿命をもち,常緑のまま積雪下で越冬する。放射相称花で,4枚の花弁に距はない。この点はケシ科の二大亜科の一つ,ケシ亜科の特徴であるが,乳液を出さず,おしべが4本に一定している点が違い,独立した小群オサバグサ亜科として扱われる特異な植物であり,系統上も分布上も第三紀周北極植物群の孤立遺存種と考えられている。山草家が鉢植えにする。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オサバグサ」の意味・わかりやすい解説

オサバグサ
おさばぐさ / 筬葉草
[学] Pteridophyllum racemosum Sieb. et Zucc.

ケシ科(APG分類:ケシ科)の多年草で、1属1種、日本の固有属。葉はすべて根生、深緑色で1回羽状複葉、櫛(くし)の歯状をしており、表面には粗い毛がまばらに生える。春から夏にかけて20~30センチメートルの濃茶色の花茎出し、直径1センチメートル前後の白い花を総状につける。萼片(がくへん)は2枚、花弁は4枚、雄しべは4本、雌しべは1本。蒴果(さくか)は熟すと2裂する。中に2~4個の丸い種子がある。和名は、葉が機織(はたお)りの筬(おさ)に似ていることによる。本州の東北地方、中部地方の針葉樹林の暗い林床にややまれに生える。オサバグサ属は、花弁は4枚で距(きょ)がなく、雄しべは4本、乳液を出さないことなどの点で、中国から地中海にかけて分布するヒペコウム属Hypecoum近縁とされている。

[寺林 進 2020年2月17日]


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百科事典マイペディア 「オサバグサ」の意味・わかりやすい解説

オサバグサ

本州中北部の深山の針葉樹林中にはえるケシ科の多年草。葉は数枚根生し,長さ10〜20cmの羽状複葉でシダの葉を思わせる。初夏に葉心から高さ30cm内外の花茎を出し,上半にまばらに白色4弁で径8mm内外の花を下向きにつける。葉を筬(おさ)に見たて,この名がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オサバグサ」の意味・わかりやすい解説

オサバグサ
Pteridophyllum racemosum

ケシ科の多年草で,本州中部以北の高山の針葉樹林内に生える。1属1種で日本特産。産地は比較的限られている。羽状に裂けた多数の葉が根生し,夏の頃,高さ 20cmぐらいの花茎を出し,総状花序をつける。花は白色4弁で,球状の 蒴果を結ぶ。

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